スパイス&ハーブ全般のQ&A

スパイス&ハーブの定義と分類

Qそもそもスパイスやハーブって何ですか?

A

料理をおいしく、生活を楽しく、私たちを健康にしてくれる魅力的なパートナーです。

ここでは、スパイス・ハーブの定義についてご紹介します。
まずスパイスですが、英語で Spice、日本語に訳せば「香辛料」、難しく言うと「飲食物の風味づけをするために副材料として用いる芳香性植物の一部で、嗜好的な香り、辛み、色を持っているものの総称」ということになります。でもあまりかた苦しく考えないで、「いつものメニューに少し加えるだけで料理をおいしく変身させてくれ、そして生活全体を楽しくし、さらにはじんわりと体の中から健康にしてくれる、私たちの生活のパートナー」と覚えておけばよいでしょう。

ハーブは、専門家によって様々な定義があり、表現が難しいのですが、ハーブは日本語では「香草」、英語のherbが、ラテン語の草木を意味していた“Herba”を語源としているように、「香りを持っていて食などに役立つ有用な植物」と言ったところが公約数的な定義でしょうか。

しかし、ハーブは草という言葉から連想される緑だけのイメージを大きく超え、その花の美しさを楽しむといった色彩豊かな面もあります。また食だけでなく、その利用範囲はクラフトやガーデニング等の分野に広がっています。だからこそ、多くの人をハーブの虜にしたと言ってもよいのかも知れません。

実際、スパイスの種類が350~500種類程度なのに対し、ハーブの種類は万を超えるとも言われています。
そこでハーブは、「より広く、その香りや色彩・形状、有用な成分で私たちの生活全般に香りと潤いをもたらしてくれる植物」と考えればよいでしょう。

Qスパイスやハーブには色々な種類がありますが、どのように分類されるのですか?

A

スパイスやハーブは、形態により分類されたり、植物のどんな部分を使っているかによって分類されたり、植物学上の分類がされたりします。でもあまり難しく考えずに気楽に使ってみましょう。慣れてくれば自分なりの分け方ができてくるかもしれません。特に、ハーブは独自な分類で楽しんでもいいでしょう。

ここでは、スパイス&ハーブを実際に使いこなすための実践的な分類法を紹介しておきましょう。
まずは、形態による分類です。おのおのの形態によって、使い方が変わってきます。
それがスパイス&ハーブを使いこなすヒントになるはずです。

スパイス&ハーブの形態と用途

形態 用途

(生のままで使います)
薬味 日本でよく使われてきた形態です。
しその葉、花穂をさしみのつまに、葉さんしょうを汁物や煮物といった使い方をします。
  フレッシュハーブ 最近話題の生のハーブは葉や茎を料理や、各種ソース類に使います。
乾燥
(ドライ)
ホール(原形)
あらびき
パウダー
料理には乾燥したスパイスをよく使います。
アイテムや用途に応じて形態を使い分けます。
ホールやあらびきは、主に調理中や仕込み時に、パウダーは料理の仕上がり時や食事中に使います。
抽出 液体 スパイス&ハーブ中の有効成分を抽出し、ベースオイルなどに溶かしたもので、新しい形態として注目されています。
スパイス&ハーブの成分を抽出したものは工業的には、液体調味料、ハム、ソーセージ、キャンデーなどの食品の原料として用いられます。
混合スパイス
(ミックススパイス)
ホールやパウダーのスパイスを組み合わせてミックスしたものです。その代表で完成度の高いのがカレー粉です。
またガラムマサラも人気です。
中華系では、「五香粉(ウーシャンフェン)」がよく使われます。
ピクルスには「ピクリングスパイス」が欠かせません。
洋風七味唐辛子とも言える「チリパウダー」はメキシコを代表する混合スパイスです。
シーズニングスパイス 特定の料理にすぐ使えるように、スパイス&ハーブに食塩、砂糖、調味料などを適量配合したもの。ハンバーグ用やサラダ用などがあり、スパイスの入門編と言えます。各種の商品が売られています。
中華系ではサンショウと塩をブレンドした「花椒塩(ホアジャオエン)」が注目されています。

次にご紹介するのは『植物のどの部分を使っているか?』という、使用部分による分類です(表2)。
料理など実際の使用場面では気にすることはありませんが、豆知識としてご紹介します。
ざっと見渡してみますと、一般に種や果実を乾燥させて使う場合が多いのですが、珍しいのは花のめしべを使うサフランや、つぼみを乾燥させたクローブです。お馴染みのシナモンは木の皮を使います。やはり葉を使うのはハーブ類が多いようです。

最近、香菜(シャンツァイ)と呼ばれ、エスニックメニューで広まってきたコリアンダーのように、ハーブとしては葉を、スパイスとしては種子を使うという例もあります。もう一つ面白いスパイスを紹介するとすれば、ナツメッグとメースでしょう。どちらも果実に分類されていますが、厳密に言いますとナツメッグは果実の種子核中の仁と呼ばれる部分、メースはその種子をとりまいている仮種皮(厳密に言うと子衣)なのです。

使う場所による分類

使う場所 スパイス&ハーブ
葉茎、花穂
タイム、セージ、ローレル、バジル、オレガノ、マジョラム、シソ、タラゴン、パセリ、ローズマリーなど
種子
コリアンダー、クミン、フェンネル、キャラウェイ、アニス、マスタード、セロリーシード、ディルシード、フェネグリーク、麻の実など
果実
コショー、ナツメッグ、メース、サンショー、オールスパイス、トウガラシ、パプリカ、マンダリン(陳皮)、カルダモン、ジュニパーベリー、スターアニス、バニラビーンズなど
根・根茎
ジンジャー、ターメリック、ガーリック、オニオン、ホースラディッシュ、ワサビ
樹皮
シナモン、カシア

サフラン、クローブ

注)コリアンダー、クミン、フェンネルなどは外観上種子を使用するグループに入っていますが、植物物学上は果実です。サフランは花のめしべです。

また、ハーブは種類も楽しみ方も多いので、逆に興味・関心に基づき、場面に即して自分なりに色んな分類をしながら楽しむことができます。

例えば、ガーデンニングを楽しむのであれば、花の色で分類したり、あるいはティータイム用・クッキング用などに分けておくとか(表3)、また多年草・2年草・一年草によって分けるとか、ハーブティーを楽しむ場合には、香りの効果によって分ける(表4)など、そうやってハーブの知識を広げることもできそうです。
また、ハーブは湿気を嫌うものとか、日照を好むものなどの基準で分類しておくとガーデニングに役立ちます。

用途別に分類した寄せ植えの例

用途 ハーブ
ティータイム用 レモンバーム、カモミール、レモンバーベナ、レモンタイム、ジャーマンカモミール、ローズマリーなど
クッキング用 チャイブ、イタリアンパセリ、ディル、ローズマリー、タイム、バジル、オレガノ、セージなど
バスタイム用 レモンバーム、ローズマリー、カモミールなど
彩りを楽しむ ラベンダー、セージ、コーンフラワー、ベルガモットなど

ハーブティーにしたらよい症状別ハーブの一例

何に良いとされる? ハーブ
胃腸に ミント、レモングラス、ハイビスカスなど
風邪に タイム、セージ、ジンジャーなど
気分が落ち込んだときに レモンバーム、セント・ジョーンズワート、バジル、ローズマリーなど

最後に植物学上の分類に少しだけ触れておきましょう。科で言うと、ミント、サボリー、バジル、シソ、マジョラム、オレガノ、セージ、タイムなど多くのハーブが属するシソ科、ディル、セロリー、キャラウェイ、コリアンダー、クミン、フェンネル、パセリ、アニスなどが属するセリ科にはお馴染みのスパイス&ハーブが多いのではないでしょうか。
唐辛子はナス科、マスタード(からし)、ワサビはアブラナ科に属しています。

市場

Qスパイス&ハーブの最近のトレンドは?

A

戦後の欧風化、ファストフード、グルメブーム、イタリアンブーム、エスニックブーム、海外旅行ブームなどでスパイス&ハーブが日本にも浸透。ハーブは、近年フレッシュハーブが伸び、ガーデニングやアロマテラピーの面から注目されています。健康、自然志向という切り口も後押ししています。

わさびやしそ、しょうがなどは、日本でも古くから使われてきたスパイス&ハーブですが、こしょうやクローブやサフランといった欧米や東南アジアで使われてきたスパイスが本格的に浸透してきたのは、やはり戦後になってからのことでしょう。

まずは戦後、欧米の食文化が取り入れられていったことが大きな要因です。主婦雑誌の料理欄に現れた「肉には塩、こしょうを」などのレシピの解説がこしょうの普及に一役をかい、さらに、手軽に使えるビン入りのスパイスが家庭用に発売されたこと、ハンバーガーショップの上陸(1971年)、ファミリーレストランの出現といった要因もスパイスに親しむ機会を広げました。また1980年代に入ると、グルメブームやイタリアンブーム、エスニックブームなどが相次ぎ、スパイスやハーブが一層身近なものになっていきました。

外に気楽に行けるようになったことも、現地のスパイスやハーブの効いたメニューに触れる機会を増やしました。
ハーブについては、80年代にイタリアに修行に渡ったシェフの若手たちが、日本に帰って、ヌーベル・キュイジーヌという、ハーブを取り入れた新しいレシピを次々に提案し、特にフレッシュのハーブに対する関心を高めました。

当初は首都圏の限られたエリアでしか売られていなかったフレッシュのハーブが、いまや全国に普及し、どこの生鮮売り場でもあたり前に目にするようになりました。 最近では、栄養たっぷりのハーブの幼葉を幾つか詰め合わせた「ベビーリーフサラダ」や「バジル」などが人気を集めています。

一方ハーブは、ガーデニングの方面でも注目を集めたり、アロマテラピーの分野からも関心が持たれたりと、食に限らず、幅広く私たちの生活に取り入れられつつあります。また、近代文明の行き過ぎへの反省から、自然志向、スローフード、スローライフの流れに乗って関心が持たれているという側面もあります。

ハーブではエッセンシャルオイルが、癒しとか潤いという面で健康のために用いられています。 中でも、スパイス&ハーブの健康効果も少しずつ科学的に解明されてきており、スパイス&ハーブは、健康という面から益々注目を集めていくと思われます。

Qどれだけの人がどんなふうに使っているのですか?

A

アメリカに比べれば、おおよそ10分の1程と推定されます。その分まだまだ伸びる余地があると言えます。最近人気のあるスパイス&ハーブはブラックペッパーあらびきやバジルなどです。
外食では殆どの人がスパイス&ハーブを経験していると思われますが、では家庭内ではどの程度スパイス&ハーブが使われているのでしょう?

日本でもスパイス&ハーブの市場は約530億円(2009年度)で、10年前、20年前と比較すると着実に伸びていますが、ナツメグやクローブなどの洋風スパイスについていえば、アメリカ人の購入量に比べればまだ10分の1程度というデータもあります。
例えば日本で人気のバジルでさえアメリカ人に比べると15分の1程度しか使っていません(一人当たりのドライハーブ購入量/重量比較)。日本で一番ポピュラーなこしょうや唐辛子でも、推定でアメリカ人の半分程度です。

しかし、これを逆読みすれば、日本でスパイス&ハーブが普及する余地はまだまだ残されているということになるでしょう。
エスビーのスパイスのシリーズ、「SPICE&HERB」シリーズの売り上げベスト5を表にしておきました(表1)。 どんなスパイスがよく使われているのか、参考にしてください。

「SPICE&HERB」シリーズ売り上げベスト5(2010年時点)

  スパイス名
1 ブラックペッパーあらびき
2 ナツメッグ
3 パセリ
4 シナモン
5 バジル

Qスパイス&ハーブの市場はどうなっているのですか?

A

市場規模は2009年度で約530億円です。一番大きなシェアを占めるのがチューブ入り香辛料、以下コショー、洋風スパイス、唐辛子と続きます。カレー粉も昔から安定した消費がみられます。注目アイテムは、唐辛子(七味唐辛子、一味唐辛子の計)や洋風スパイスの中のバジルやオレガノなどのハーブ系、サフラン、ガラムマサラ、と言ったところでしょう。

また、ここで示した数字の中には入っていませんが、フレッシュハーブがここのところのハーブブーム、メニューの多様化の中で実力をつけてきており、今のトレンドと言ってよいでしょう。さらに『健康』を切り口に、シナモンやターメリック、ローズマリーなどが注目を集めています。薬効がきっかけになるところはいかにも現代的と言えます。

日本のスパイスの市場は年間およそ、530億円(2009年4月から2010年3月)の規模となっています。
内訳を見ると、日本独特の現象と思われますが、チューブ入り香辛料の分野が約4割近くを占めています。
やはりわさび、からしに人気があり、以下ショウガ、にんにくの順になります。

続いてコショー(味付塩コショーも含む)が全体の18%、洋風スパイスが約15%、唐辛子(七味唐辛子、一味唐辛子の計)が約9%、カレー粉が約4%といったところです。

注目のスパイスとしては、シナモンやバジルなどの洋風スパイスが着実に規模を拡大させています。「ダイエットに効果的」などの健康効果がマスコミを通じて流されたり、家庭でも辛さを楽しむようになってきたりして、市場が拡大している唐辛子も注目です。カレー粉も今や味噌・醤油に並ぶ基礎調味料になっています。この市場にはカウントされていませんが、先ほど触れたフレッシュハーブも大きく成長しており、注目を集めています。
メーカーシェアとしては、弊社エスビー食品が約54%のシェアを確保し、市場をリードしています。(2010.6)

注目の洋風スパイス

洋風スパイスはエスニックブーム、グルメブーム、イタリアンブームなどの中で着実に売り上げを伸ばしてきましたが、ここでは今がトレンドの注目のスパイスをいくつか紹介しましょう。

シナモン デザートや飲み物と特に相性の良いシナモンですが、最近は、その健康効果が注目されています。シナモンに含まれる成分が、細胞の免疫力を高めたり、血糖値を下げる働きをする可能性があると言われ、注目を集めています。
ミル付きのペッパー ここ数年、急速に売り上げを伸ばしているのが「ミル」が付いたタイプのペッパーです。ミル付きのスパイスは、挽き立ての香りを楽しめるのが特徴で、本格志向の高まりの中で広く使われるようになってきているようです。
サフラン 高価なスパイスですが、サフランライスやブイヤベースに欠かせないスパイスとして上位に顔を出しています。外米が入ってきた時によく合うスパイスとして一気に広まりました。
ガラムマサラ ミックススパイスなのですが、カレーをおいしく辛くするスパイスとして定着しました。ガラムマサラはヒンズー語で『ヒリヒリと辛い混合スパイス』という意味で、インドでは各々の家庭にその家のオリジナルブレンドによるガラムマサラが味のベースとして常備されています。その名の通り、何種類かの辛いスパイスと香りのスパイスをほどよくブレンドしたミックススパイスです。
クミン 今、注目のスパイスです。カレーを作るときに、クミンを使うと本格的な香りを出すことができるとして、人気が高まっています。クミンシードは、調理の最初の段階(油を熱するとき)に使われることから、「スタータースパイス」と呼ばれます。

他にも、唐辛子やターメリックなどが健康にいい、という切り口で注目を浴びたりしますが、無理な取り方は避けた方がいいでしょう。何よりもスパイス&ハーブは楽しんで、おいしく頂くのが一番!それでこそ私たちの生活を豊かに健康にしてくれるのです。

唐辛子

家庭の中で辛さを楽しむ傾向が定着してきた中で売り上げを伸ばしています。
S&Bの七味唐辛子、一味唐辛子の売上を見ますと、ここ十数年で約2倍に膨れ上がっています。

これは、エスニックブームや海外旅行ブームで辛い料理を含め様々な食体験を通してエスニックメニューが家庭にも浸透し、かつ辛さに対して抵抗がなくなり、基本の5つの味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)につぐ第6番目の味として刺激的な辛味を家庭で楽しむ傾向が強まってきたことが背景にあると思われます。
また、最近は健康の観点からも注目されていますが、急激な取り方には注意が必要です。

フレッシュハーブ

最もトレンディーといえばフレッシュハーブです。
乾燥させたスパイスとは区別される、生の野菜としてのフレッシュハーブは今大きな注目を集めています。S&Bでは1987年といいますから、15年以上前に先駆けて売り出しましたが、当時は店においてもらうだけでも大変、注目したのはレストランのシェフだけという状態でした。しかしここ数年、グルメブーム、エスニックブーム、イタリアンブーム、ハーブブームなどによって注目が集まり、販路も首都圏から全国にひろがり、たくさんのスーパーで売られるようになりました。

単品アイテム(数種類がミックスされていないもの)で見た場合はやはり、バジルがだんとつです。
最近では、栄養たっぷりのハーブの幼葉を幾つか詰め合わせたベビーリーフサラダが注目されています。
種類も今や約30アイテムに広がり、フレッシュハーブは今後も益々広がりまた浸透していくことでしょう。

カレー粉

カレー粉-カレー粉はいまや味噌・しょうゆ・砂糖・塩などとともに家庭では欠かせない基本調味料となっています。
1923年に日本ではじめて純国産のカレーを作ったのは、私どもエスビー食品の創業者・山崎峯次郎でした。それから80有余年、カレーも即席カレーやレトルトカレーへと進化し、現在カレー粉からカレーを作ろうという家庭は少ないのではないでしょうか。

しかし、即席カレーやレトルトカレーが全盛の中でもしっかりと市場に定着しているのがカレー粉です。これは、料理のレパートリーを広げることに日頃苦心されている主婦の皆さんが、カレー味を味のバリエーションに加えようとされているからではないかと思われます。勿論、内食回帰やエスニックブームという事情も後押しをしているのでしょう。カレー味の野菜炒めや焼きソバなど、カレー粉は味噌・醤油と並んで欠かせない基本調味料の一つとして、キッチンに常備されているようです。

日本人とスパイス&ハーブ

Q日本で使われてきたスパイス&ハーブにはどんなものがありますか?

A

日本でも古い歴史があり、習俗でもスパイス&ハーブが使われてきました。日本式のアロマテラピーと言える使い方もされてきました。
日本でもスパイス&ハーブは長い歴史があります。「古事記」(712年)には、しょうがか山椒を指す「ハジカミ」や、ニンニクが記載され、聖武天皇(724年~749年)の代には既にアジア産のスパイスが上陸していました。当時の正倉院の御物には、アジアで産出されたと思われるこしょうやナツメッグ、クローブが収められ、薬として使われていたことをうかがわせます。

古くから使われ、現在でもお馴染みのわさび、唐辛子、にんにく、しそ、たで、ワケギ、アサツキ、みょうが、山椒等はれっきとしたスパイス&ハーブですし、古くからの習慣として受け継がれている「ゆず湯」(冬至にお風呂に入れる)、「しょうぶ湯」(端午の節句)は皮膚からの成分吸収が期待でき、香りを楽しむという点で、日本式ハーブバスあるいはアロマテラピーと言ってよいでしょう。

また、正月に飲むお屠蘇には山椒やシナモンが使われており、日本式ハーブ酒というところでしょうか?さらに、日本でもお馴染みの漢方薬にも、多くのスパイスが使われています。例えば、葛根湯によく使われる甘草(リカリス)、肉桂(シナモン)や、胃薬に配合されることの多い丁子(クローブ)などが有名です。
このように、スパイス&ハーブに親しむ習慣は日本でも昔からあったのです。そして戦後、日本にもスパイス&ハーブが広く普及していった事情については、別項(スパイス&ハーブの最近のトレンドは?)をご覧下さい。

Qスパイスは辛いものなのですか?

A

スパイスはまず香りを楽しむもの。豊かな自然に恵まれた日本では、素材の味わいを大切にする調理法の為、アクセントとしてスパイスを使うことが多かったのでスパイスは辛いものとイメージされてきました。

日本ではスパイスは辛いものとイメージされる場合が多いようです。
日本は海の幸、山の幸に恵まれ、新鮮な食べ物が容易に手に入ったことから、強い香り付けや消臭効果を求める必要はなく、素材本来の持ち味をそのまま生かすような調理法が主流でした。そのため、日本ではスパイスを薬味として、新鮮故に味が比較的淡白な素材に辛みなどのアクセントを付ける目的で、少量を用いる場合が多かったのです。
こんなことから、日本ではスパイスは辛いものというイメージが強く印象付けられることになりました。

しかし、世界のスパイスのうち、辛いものはわずかで、ほとんどのスパイスは香りを楽しむ目的で使われています。
スパイス&ハーブを使いこなしていくためには、「まずスパイス&ハーブは香りを楽しむもの」という理解をしておくことが必要です。

一例を挙げてみますと、写真のラザニアには7 種類のスパイス&ハーブを使っています。
この中で「辛みをつける」働きを持っているのは、ブラックペッパーだけです。
(ガーリックは生だと辛いと感じることがありますが、加熱すると辛みをあまり感じなくなります。)

スパイス&ハーブの豆知識

Qスパイス&ハーブはどこから来るのですか?

A

正に世界中からやってきます。そして世界の生産地を地図で見ていくと、スパイス・ハーブをめぐる歴史や風土・経済事情が浮かび上がってきます。

世界のスパイスの産地を一覧にしました。ざっと見てみますと、ヨーロッパ、特に地中海沿岸の国々にはハーブ類が、アジアにはスパイス類が多いようです。インドはスパイスの名前を読んでいるだけでカレーの香りが漂ってきそうです。

でも元々アジアが原産のクローブがアフリカ諸国(特にザンジバル)で生産されていたりするのは何故でしょう?また唐辛子は元々中南米が原産地という事情もあり、やはりメキシコで生産されていますが、今や世界に広がっています。そこにはスパイスをめぐる長い歴史があるのです。

またクローブについてはこちらへ(各スパイスにつても色んな歴史エピソードがあります)

また中国を見ると今や多彩なスパイスの生産国になっています。スパイスの生産国を少し眺めるだけで経済発展の状況や歴史などの様々な事情が読み取れそうです。これもスパイス&ハーブの奥深さを物語っているといえるでしょう。

主なスパイスの生産国

ヨーロッパ
スペイン セロリー、ローレル、セージ、タイム、サボリー、オレガノ、ペパーミント、サフラン、パプリカ、タラゴン、ローズマリー、アニスシード、マジョラム、ディルシード、バニラ、マンダリン、ジュニパーベリー、パセリ、ラベンダー
フランス ラベンダー、セロリー、ローレル、タイム、サボリー、オレガノ、ペパーミント、バジル、タラゴン、ローズマリー、マジョラム、ジュニパーベリー、パセリ
オランダ キャラウェイ、ディルシード、マスタード、タラゴン、バジル
イタリア ローズマリー、マスタード、パセリ、オレガノ、タラゴン
ギリシャ ローレル、セージ、オレガノ、バジル、タイム、マジョラム
ポーランド マスタード、ミント、レモンバーム
ウクライナ コリアンダー、クミン
ハンガリー バジル、マジョラム、パセリ
旧ユーゴスラビア フェンネル、セージ、ローレル
ルーマニア コリアンダー、フェンネル、オニオン、マジョラム、ミント
ブルガリア オニオン、オレガノ、ペパーミント
アルバニア セージ、サボリー、オレガノ
中近東・西アジア
トルコ けしの実、ローレル、セージ、アニスシード、オレガノ、ローズマリー、マジョラム、サフラン
モロッコ コリアンダー、フェネグリーク、ローレル、タイム、サボリー、オレガノ、パプリカ、バニラ、ローズマリー、サフラン、ラベンダー
イラン クミン、けしの実、サフラン、スターアニス、コリアンダー、レモンバーム、ミント、バジル
アフガニスタン 甘草(リカリス)
シリア クミン
アフリカ
エジプト コリアンダー、クミン、バジル、キャラウェイ、オニオン、ペパーミント、スペアミント、ジャーマンカモミール、ハイビスカス
フランス領レユニオン島 ピンクペッパー
タンザニア クローブ
ザンジバル クローブ
マダガスカル クローブ、バニラ
アジア・オセアニア
インド ターメリック、クミン、カルダモン、こしょう、フェンネル、フェネグリーク、セロリー、けしの実、サフラン、ガーリック、ジンジャー、唐辛子、キャラウェイ、アニスシード、ディルシード、ゴマ、サボリー、タイム、オレガノ
インドネシア クローブ、ナツメッグ、メース、シナモン、コショー、ジンジャー
パキスタン けしの実、唐辛子、甘草(リカリス)、ゴマ
スリランカ シナモン、ナツメッグ、メース、こしょう、カルダモン、クローブ
ミャンマー ゴマ
マレーシア こしょう、クローブ
タイ こしょう、ジンジャー、レモングラス
ベトナム シナモン、コショー、スターアニス、ゴマ
韓国 唐辛子、サンショウ
台湾 ターメリック、ジンジャー、ホースラディッシュ、くちなしの実、ワサビ
日本 くちなしの実、サンショウ、沢わさび、マンダリン、しそ
中華人民共和国 ターメリック、コリアンダー、桂皮、こしょう、フェンネル、サフラン、ガーリック、ジンジャー、唐辛子、ホースラディッシュ、スターアニス、甘草(リカリス)、麻の実、くちなしの実、花椒、ゴマ、マンダリン、マスタード
オーストラリア コリアンダー、マスタード、オニオン
ニュージーランド オニオン
北米・中南米
カナダ マスタード、コリアンダー
アメリカ合衆国 ローレル、ペパーミント、ガーリック、ホースラディッシュ、タラゴン、ローズマリー、マジョラム、オニオン、パセリ、サボリー、チャービル、ラベンダー、タイム、オレガノ
メキシコ 唐辛子、オールスパイス、レモングラス、マジョラム
ジャマイカ オールスパイス
グレナダ ナツメッグ、メース
グアテマラ カルダモン
コロンビア カルダモン
ブラジル こしょう
チリ オレガノ、パプリカ、バニラ、ローズヒップ

Q日本は世界からスパイスをどれくらい輸入しているの?

A

日本には約4万5千トンが輸入されています(2009年)。
財務省が関税をかけるために取っている、通関統計をもとに算出したものです。純粋のスパイスの統計ではないので、一部区分に不自然なところもありますが、大よその数字はつかめます。

もしもゴマをスパイスとみなすと、数字は一気に跳ね上がります。2009年の輸入実績が128,917tですから、それだけで以下のスパイス輸入総量を大きく越えてしまいます。
ゴマは主に油を取るために輸入されています(主な輸入国はパラグアイ31,491t、タンザニア28,329t、ナイジェリア 18,640t)。(2010.6)

単位=t(トン)

品名 2008年度 2009年度(1-12月)
数量t 数量t  主要輸入先国&数量t
胡椒 4,721 5,051 マレーシア 3,629 インドネシア 815 インド 426
胡椒パウダー 2,973 3,650 マレーシア 2,204 インドネシア 1,086 インド 133
オールスパイス 143 172 メキシコ 105 ジャマイカ 67    
唐辛子 3,554 4,263 中国 4,249 インド 5 韓国 5
唐辛子パウダー 6,639 7,023 中国 6,263 韓国 635 USA 42
パプリカ 1,008 1,031 スペイン 772 チリ 260    
バニラビーンズ 108 102 マダガスカル 94.6 ウガンダ 2.2 PNG 2.0
桂皮ホール
(シナモンツリー含む)
598 351 中国 236 ベトナム 94 スリランカ 14
桂皮パウダー
(シナモンツリー含む)
628 611 中国 417 ベトナム 106 マレーシア 78
クローブ 348 334 マダガスカル 157 タンザニア 104 インドネシア 59
ナツメッグ 471 537 インドネシア 535 スリランカ 2.5    
ナツメッグ パウダー 27 15 インドネシア 14 インド 0.2    
メース 41 41 インドネシア 41        
カルダモン 371 316 グァテマラ 275 インド 36 スリランカ 3
スターアニス
(含アニスシード)
114 125 中国 90 スペイン 24 トルコ 7
コリアンダー 3,901 2,912 モロッコ 2,663 カナダ 207 インド 38
クミン 2,151 2,113 イラン 1,358 インド 694 トルコ 50
カラウェイシード 40 22 オランダ 20 エジプト 2    
フェンネル
(含ジュニパーベリー)
485 635 中国 544 インド 86 イタリア 3
ターメリック 3,594 3,174 インド 2,793 中国 326 ベトナム 30
ターメリック
パウダー
867 1,242 インド 678 中国 493 マレーシア 28
ローレル&タイム 311 288 トルコ 159 モロッコ 80 スペイン 39
サフラン 2.03 1.1 イラン 0.8 スペイン 0.3 中国 0.1
マスタード 6,274 6,029 カナダ 5,831 USA 157.0 中国 20
マスタード粉
及び調整品
2,910 2,348 カナダ 1,009 USA 847 フィリピン 220
麻の実 1,019 1,021 中国 1,019.0 カナダ 2.0    
けしの実 273 282 トルコ 248.0 オーストラリア 22.0 インド 9.0
甘草 1,682 1,425 中国 869 アフガニスタン 397 トルコ 100
小計 45,255 45,114            
ごま 185,105 128,917 パラグアイ 31,491 タンザニア 28,329 ナイジェリア 18,640

注)ビンなどに入っている、製品になったスパイスは除いてあります。

注)しょうがの2003年の輸入実績は生鮮品が46,435t、生鮮を除くしょうがが26,950tあります。

注)小売用の容器入りにしたものを除いた、その他の香辛料として分類されているものが合計で約2,400tあります。

Qスパイス&ハーブは世界に何種類くらいあるのですか?

A

「スパイス&ハーブ」をどのように定義付けるかによっても違いますが、スパイスの種類は350~500、ハーブの種類は万を超えるとも言われています。

世界で使われているスパイスの種類は350種類から500種類くらいあると言われています。 現在日本ではそのうち約100種類が使われており、さらにカレー粉に使用しているのが30種類から40種類です。もっと細かく見ていきますと、たとえば唐辛子はここでは一種と数えていますが、唐辛子の仲間だけでも数多くあると言われています。
スパイスの世界は想像以上に広く深いようです。

ところで、この中で辛味のあるスパイスはどのくらいあると思いますか?
日本では「スパイス」というと「辛いもの」というイメージを持っている方が少なからずいらっしゃいますが、実は辛いスパイスは全体の一割にも満たないのです。

スパイスの特徴は「辛い」ということよりも、「香りを持っている」ことなのです。スパイスの数だけ香りもあり、それらの組み合わせを考えると無限の風味を楽しむことができます。工夫の中でどんな香りが新しく生まれるか、これがスパイスを使う楽しみです。

また、万を超えるとも言われるハーブですが、私たちが日ごろ手にできるもの、市場に出回っているものとなると数百種類となります。たくさんの種類の中から、「ガーデニングを楽しみたい」「食卓に取り入れたい」といったご自分の興味・関心に基づいて、様々な楽しみ方をすることができます。

Q世界にはどんなミックススパイスがあるのですか?

A

ミックススパイスとは、名前の通り複数のスパイスをミックスしたものです。地域や国により、様々なミックススパイスが存在しますが、それぞれの食文化に根付いたスパイス&ハーブが配合されており、料理の風味付けに使えば、手軽にその国らしさを加えることができます。

世界各地にはさまざまな種類のミックススパイスがあり、それぞれ個性豊かな香りを生み出しています。地域により使われるスパイス&ハーブには傾向があり、インドから中近東、アフリカにかけては唐辛子、クミン、コリアンダーなど、ヨーロッパではナツメッグ、クローブ、シナモンや、ハーブ類、アメリカでは唐辛子、クミン、マスタード、パプリカなどが配合されたミックススパイスが多いのが特徴です。

それでは、具体的にどのようなミックススパイスが存在するのか、代表的なものをご紹介しましょう。

アフリカ

ミックススパイス名
(国名)
ミックスされている原料
用途
ダッカ〔デュカ〕
(エジプト他)
ごま、コリアンダーシード、クミン、ナッツ類など
パンにオリーブ油をつけ、そこにダッカをくっつけて食べる。
ラセラヌー
(モロッコ)
カルダモン、クベバ、ナツメッグ、ロングペッパーなど20種類以上のスパイスやドライフラワーを混合
羊料理、米料理、クスクス料理や、タジン(専用鍋で作る煮込み料理)などに。
ベルベレ
(エチオピア)
唐辛子、クローブ、ジンジャーに複数のスパイス(料理や好みで選択)を混合
エチオピアのシチュー”ワット”などに。
ザーター
(北アフリカ)
白ごま、スマック、オレガノなど
肉料理、野菜料理に。また、オリーブ油と混ぜてパンに塗って焼くなど。

中近東

ミックススパイス名
(国名)
ミックスされている原料
用途
バハラット
(湾岸諸国)
ナツメッグ、ブラックペッパー、コリアンダーシード、クミン、クローブ、シナモン、カルダモン、パプリカなど
肉料理、野菜料理に。
ザグ
(イエメン)
赤唐辛子、コリアンダー(リーフ)にレモンやにんにく、コリアンダー(シード)など好みのスパイスを混合(ペースト状)
様々な料理に薬味として利用。

アジア

ミックススパイス名
(国名)
ミックスされている原料
用途
七味唐辛子
(日本)
唐辛子、ごま、けしの実、青のりなどを混合
麺類や鍋料理などに。
五香粉
(中国)
山椒、シナモン、クローブ、八角、陳皮などを混合
煮物、揚げ物、スープなど様々な中華料理に。
ガラムマサラ
(インド)
ペッパー、唐辛子、クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモンなどを混合
肉、魚、野菜料理など。(素材や家庭により配合は様々)
カレー粉
(インド他)
ターメリック、クミン、コリアンダー、唐辛子などを混合
カレー料理に。
パンチフォロン
(インド)
クミンシード、二ゲラ
(ブラッククミン)、フェネグリーク、マスタードシード、フェンネルシードを混合
豆料理や野菜料理に。
チャートマサラ
(インド)
塩、アムチュール、クミン、コリアンダー、アジョワン、アサフェティダ、ブラックペッパー、唐辛子などを混合
生野菜、ゆで卵、果物などにかけて利用。

ヨーロッパ

ミックススパイス名
(国名)
ミックスされている原料
用途
カトルエピス
(フランス)
ナツメッグ、シナモン、クローブ、ブラックペッパーなどを混合
テリーヌやパテの他、卵料理やシチュー、グラタンに。
エルブドプロバンス
(フランス)
タイム、セージ、ローズマリー、マジョラム、サボリーなど
南フランス地方の家庭料理(煮込み、炒め物、焼き物など)に。
ピクリングスパイス
(イギリスなど)
コリアンダーシード、オールスパイス、クローブ、マスタードシードなど
ピクルスを漬け込むときに。

アメリカ

ミックススパイス名
(国名)
ミックスされている原料
用途
チリパウダー
(メキシコなど)
唐辛子、クミン、オレガノなどを混合
チリコンカン、チリビーンズなどの煮込み料理の他、様々な料理に。
ケイジャンスパイス
(アメリカ合衆国)
パプリカ、マスタード、クミン、唐辛子など
ジャンバラヤ(炊き込みご飯)、ガンボ(スープ)など、アメリカ合衆国南部の郷土料理に。

Qスパイスやハーブには、色々な呼び名があるのですか?

A

各々のスパイスはいろんな名前を持っています。スパイスの名前で遊んでしまう…、これもスパイスの楽しみ方の一つです。以外なところに別の名前で出ていて、知らず知らずのうちに使っているということも。

名前の由来を探るだけで面白い冒険もできそうです。
ローズマリー一つをとってみても“マリアのバラ?という意味かしら”、でも本当は?シェフがいつも言っているカイエンペッパーって唐辛子なの?ネーミング一つをとってみてもスパイスへの興味は尽きることがありません。

スパイスの呼び方は一つではありません。そんな名前のいろいろを探っていくのも楽しいものです。同じスパイスと思っていても、名前によって微妙に形や風味が違うものもあったり、慣習上言いならわされてきた名前があったり、語源を調べてみるとなるほどとうなってしまったり…。そうしていくうちに幅広いスパイスの知識もいつのまにかついていくでしょう。

またこんな楽しみ方もできます。その時の雰囲気や料理によって呼び名を変えてみるのはどうでしょうか?例えば、人気のロケット、「今日はルッコラのピザ」また別の機会では「エルーカのフレンチサラダ」などと言うのも楽しいものです。

以下いくつかのスパイスのネーミングにまつわるエピソードと、表でスパイスのいろんな呼び方、及び語源を紹介しましょう。それぞれのスパイス名の詳しい由来などは各スパイスの解説を見て下さい。

ローズマリーの名前の由来は?

ローズマリーは、マリアのバラ(Rose of Mary)から付けられた名前と思いがちです。ハーブの中ではもっとも美しいといわれる淡い紺色の可憐な花を見ると、なるほどと思ってしまいますが、正しくはラテン語のロス(ros=露)とマリアヌ(marinus=海)が合わさってできた名前です。地中海沿岸に広く自生し、露と海の塩風にさらされてよく育つという意味が込められているそうです。

漢方薬とスパイスの名前

もしもお手元に漢方薬があったら、成分表示を見て下さい。たいていはいかにも漢方らしく、漢字やかなで色んな名前が並んでいます。漢方胃腸薬の成分表示をみてみましょう。そこにはシャクヤクなどの成分に交じって「ケイヒ、ウイキョウ、カンゾウ」とあります。これらを他の名前で読み替えてみると「シナモン、フェンネル、リカリス」。ほらお馴染みのスパイスの名前も浮かんできます。スパイスは元々薬として使われてきた歴史があります。いろんな経験の中で薬効が明らかにされてきたのでしょう。それが漢方の世界を支えてきました。名前からスパイスを解読していくと、スパイスの健康作用にもゆきあたります。

唐辛子のややこしい名前

“レッドペパー、チリーペッパー、カイエンペッパー”これらは全ていわゆる唐辛子を言い表す呼び名です。唐辛子は大航海時代に冒険者たちが中南米から持ち帰って以後、またたくまに世界中にひろまっていきました。大変適応力が強いために様々な品種を生み出し、その土地で根づいていきました。その過程で名前も混乱していったのです。でもカイエンペッパーって唐辛子の種類の一つでは?うちのおばあちゃんは唐辛子は何でも“鷹の爪”って呼んでいたけれど…

また、呼び名については「唐辛子の呼び名その1」および「唐辛子の呼び名その2」へ

ローレルとローリエ、ベイリーブス

ベイリーブスは英語名、ローリエはフランス名、ローレルはスペイン名です。商業上ではローレルとベイリーブスを使い分け、地中海沿岸、ヨーロッパ産のものをローレルと呼び、アメリカ産のものをベイリーブスと呼んでいます。前者は丸みをおびた葉型で、後者は細長い形をしています。香り成分も幾分違っており、ベイリーブスは多少苦味が効いてローレルとは一味違った風味が楽しめます。同じ月桂樹の葉ですが、名前によって微妙に形・香りが違うんですね。

こんなふうにスパイスのネーミングから、歴史・文化・香り・薬効などいろんなエピソードが浮かび上がってきます。名前を切り口にスパイスにアプローチするというのも一つの親しみ方といえるでしょう。

Q「食」以外でスパイス&ハーブが使われている分野はあるのですか?

A

現代では、スパイス&ハーブは、身近なところでいっぱい使われています。

スパイスやハーブは世界に数多くの種類があり、「食」の分野に限らず、暮らしの中の様々な場面で使われています。
みなさんがよくご存知のものですと、園芸に利用されたり、ポプリやリースといったクラフトを作るのに使われています。

意外な分野では、医療の世界でもスパイスやハーブが活用されています。たとえば、風邪薬、胃腸薬、湿布薬などにスパイスが使われているものがありますし、有名な漢方薬「うこん」は「ターメリック」、「桂皮」は「シナモン」、「丁子」は「クローブ」を指し、スパイスそのものが薬として処方されているのです(ただし、食品として販売されているものと、薬として販売されているものでは、含有成分の基準値が異なります)。また、海外、特にイギリスでは、現代医療を補う代替療法として「ハーブ療法」は根強い人気があります。ハーブ療法とは、ハーブを利用して身体のバランスの崩れをもとに戻し、身体を強化しながら自然治癒力を高めるのが特徴で、チンキ(アルコールなどにハーブの成分を抽出した液)や、ハーブティーなどが治療薬として処方されます。

さらに、アロマテラピーというものがあります。アロマテラピーは芳香療法と訳され、植物(ハーブやスパイスなど)から抽出した「精油(エッセンシャルオイル)」と呼ばれる香りの成分を利用して、部屋に良い香りを漂わせたり、入浴剤を作ったり、マッサージを行ったりし、癒しや美容、健康に役立てるというものです。女性を中心に人気が高まっています。

スパイス&ハーブ クッキング (スパイス&ハーブを使う前に)

Qスパイス&ハーブは料理に対してどのような働きをするのですか?

A

スパイス&ハーブの料理に対する働きは3つ。香り付け・辛み付け・色付けです。辛み付け・色付けの働きを持っているスパイス&ハーブは一部のものだけですが、香り付けの働きは、すべてのスパイス&ハーブが持っています。

香りをつける 色をつける 辛みをつける

スパイス&ハーブには香り付け、辛み付け、色付けの3つの作用があります。その中でも香り付けの作用がスパイス&ハーブの第一の作用です。香りを使いこなすこと、これがスパイス&ハーブ名人と言われる条件です。

厳密には、単純に香りを付ける作用と、肉や魚などの臭みを和らげる(マスキング)作用に分かれますが、2つの作用が重なっている場合もあるのであまり厳密に考える必要は無いでしょう。

次に、辛み付けの作用ですが、日本ではスパイスと言えば辛い、と連想するくらい、スパイスの辛み付け作用はおなじみになっています。
ただし、辛さの成分を持っているスパイスは全体の一割にも満たないのが現状です。辛みには、ヒリヒリした辛み、ピリッと刺激的な辛みなど様々なものがあり、その特性を活かして料理のアクセントに使います。

そして、色付けの作用です。赤、黄色、緑など鮮やかな色の演出には、スパイス&ハーブの色付けの作用が欠かせません。それも、何と言っても天然の植物による色付けですから、とても優しい彩りですし、安心です。
またハーブの花を飾りに使ったりするなど、形、彩りにも新しいトレンドが生まれています。

スパイス&ハーブの香り・辛み・色を使いこなすためのヒントをご用意しましたので、是非ご覧ください。

Qどんなスパイス&ハーブから揃えればいいのですか?

A

もちろん、みなさんそれぞれの好みで揃えて頂くのが一番。ですがここでは、スパイス&ハーブ初心者の方にも使いやすく、また、いろんな料理に広く使えるスパイス&ハーブをご紹介します。

初めてでも使いやすい、基礎のスパイス&ハーブ

こしょう 肉料理・魚料理・野菜料理・卵料理と幅広く使えます。最初は「キッチンコショー」「テーブルコショー」など、ブラックペッパーとホワイトペッパーが混ざっているものが便利。慣れてきたら、料理によってブラックペッパー、ホワイトペッパーを使い分けると、スパイスの達人にグンと近づきます。(ブラックペッパー、ホワイトペッパーの違いはこちら
唐辛子 色々な形態がありますが、よく使われるのは「七味」「一味」「鷹の爪」といった商品に使われています。「七味」「一味」はうどん・そば・味噌汁などの薬味の他、炒め物にも利用できます。また、「鷹の爪」は煮込み料理などに利用します。
にんにく 肉や魚の下ごしらえ、炒め物、煮込み料理にと幅広く使えます。すでにすりおろされた状態になっている、チューブのものが大変便利です。
しょうが 肉や魚の下ごしらえ、炒め物、煮込み料理にと幅広く使えます。やはり、チューブ入りのものが大変便利です。
からし 料理の過程でつかうというより、薬味として用いることの方が多いですが食卓には欠かせないスパイスです。シューマイやはるまき、豚の角煮、おでんなどにお好みで。
わさび わさびといえば、お刺身やざるそば、お茶漬けなどに欠かせない薬味ですが、他にも色んな用途があり、揃えておくと料理の幅が広がります。たとえばわさび醤油やわさびマヨネーズにして、肉や野菜にかけたり和えたりすると美味ですよ。
ローレル 洋風煮込み料理に欠かせないハーブ。肉や野菜の臭みをとり、さわやかな香りを足してくれます。使い方もとっても簡単なので、初心者にもおすすめです。
パセリ 香りはもちろんですが、料理の彩りとして用いられることも多いハーブです。生のものを使うと豪華ですが、ドライのものはパパッと振れて、手軽で便利です。スープ、シチュー、卵料理など、彩りがほしいなあと思ったら仕上げに一振り、二振り。
パプリカ 粉末のパプリカは、甘い香りときれいな赤色が特徴のスパイスです。ポテトサラダ、肉や魚介のグリルなど、彩りが足りないと思ったらパパッと手軽に振りかけてみましょう。
山椒 小粒でもピリリと辛いと言われる山椒ですが、辛みだけでなく、豊かな香りが印象的なスパイスです。鰻の蒲焼きにかけるのが定番ですが、お吸い物やみそ汁などに一振りするのもおすすめ。爽やかな香りを添えてくれます。

次に揃えたい、お料理上手のスパイス&ハーブ

ナツメッグ ひき肉料理をグッとおいしくしてくれます。
バジル 特にトマトとの相性バッチリ。トマトソースと煮込んでもおいしい。
カレー粉 いろんな料理の味付けに。料理のバリエーションが広がります。
タイム 魚との相性が抜群。また、煮込み料理にも。
ラー油 餃子以外にもいろいろ使えます。野菜炒めに加えてみたり・・・。
シナモン お菓子に使われるイメージが強いシナモンですが、野菜炒めやピラフなど、塩味系の料理とも好相性。

スパイス&ハーブ クッキング (スパイス&ハーブを使ってみよう)

Qスパイス&ハーブを使いこなすコツは?

A

スパイス&ハーブの基本の働き、「香り付け・辛み付け・色付け」が分かったら、後は使い方。ポイントは、少しずつ加えること、素材との相性を知ることです。

まずは、スパイス&ハーブの3つの働き、「香り付け・辛み付け・色付け」を覚えましょう。香り・辛み・色を使いこなすヒントもご覧ください。

そして、使うときのポイントです。まずは、「少量からはじめる」ということ。

さあスパイス料理を、と意気込んでスパイスをいっぱい入れてしまい大失敗。
これでスパイス嫌いになっていませんか? スパイス料理は、“ごく少量から”を心がけましょう。
そして味を自分の舌で試しては、少しづつ量を増やしていきます。これを繰り返して適量を見つけるのです。

ですから、料理レシピを参考にする場合でも、この原則を適用してみるとよいでしょう。 それから、スパイス&ハーブと素材(肉、魚、野菜など)との相性を少しずつ覚えましょう。ポイントは、料理メニューとの相性を覚えるのではなく、「素材」との相性を覚えること。これでメニューバリエーションが広がります。

例えばハンバーグにナツメッグは欠かせませんが、"ハンバーグにはナツメッグ"という覚え方では、それ以上レパートリーは広がりません。
このように、具体的な料理メニュー名と関連付けて覚えるのでなくて、"ひき肉料理にはナツメッグ"というふうに素材とスパイスを関連付けて覚えると、ひき肉を使うミートボールやミートローフなどにも応用が利き、レパートリーの幅がぐんと広がります。他にも、西洋風煮込み料理にはローレル、トマト料理にはオレガノというふうに覚えましょう。

しかし、これはあくまで基本です。様々な挑戦や試行錯誤の中で、意外な組み合わせが発見できるかもしれません。
創意・工夫・冒険の中で新しいメニューを創造して下さい。以下参考に、素材とスパイスの関係を一覧表で紹介しておきます。

各スパイスと相性のよい素材の一覧表

スパイス 相性の良い素材
主な料理
オールスパイス 肉(牛・豚・羊)、フルーツ
ビーフシチュー、ビーフストロガノフ、焼きりんご、パンチ
ローレル 肉、じゃがいも
シチュー、カレー、ポテトサラダ、マッシュポテト
クローブ 肉、ハム さつまいも
ハムステーキ、ローストビーフ、さつまいもの甘煮、さつまいもの重ね煮
ナツメッグ、メース 肉、挽肉、ミルク
ハンバーグ、ロールキャベツ、ミートローフ、ミルクセーキ、ドーナツ
シナモン 砂糖、フルーツ
ドーナツ、クッキー、ジャム、コーヒー、パンチ、ケーキ
タイム 魚、貝、肉
フライ、ムニエル、マリネ、シチュー、チキンソテー・グリル
オレガノ トマト、チーズ
ピザ、トマトサラダ、トマトスープ、ラザニア、かぼちゃのチーズ焼き
セージ 肉(牛・豚・羊・内臓)
ポークソテー、トンカツソース、テリーヌ、レバーのマリネ
サボリー 卵、豆
オムレツ、豆のスープ、ポークビーンズ
フェンネル 酢、魚、貝
ザワークラフト、ピクルス、魚貝のソテー・フライ
カルダモン トマト、フルーツ
ハヤシ、ジャム、フルーツケーキ
バニラビーンズ 砂糖、フルーツ
デザート全般、ココア、プリン、ケーキ
タラゴン エスカルゴ、鶏卵、野菜
エスカルゴブルゴーニュ、ローストチキン、オムレツ、ドレッシング、ピクルス
マジョラム 豆、魚、卵、レバー、羊、鶏、ラム、マトン
ソーセージ、レバーソテー、豆の煮物、ドレッシング、魚のグリル
ローズマリー ラム、キッド、魚貝、じゃが芋、鶏
ドレッシング、鶏グリル、ソテー、ボイルドポテト
キャラウェイ 小麦粉、じゃがいも、魚、りんご、野菜
パン、クッキー、ビスケット、焼きりんご、アップルパイ、ザワークラフト、ポテトサラダ
ディル 酢、魚
ドレッシング、ピクルス、パン、魚のソテー・グリル
アニス 果実、砂糖、小麦粉、アルコール
アップルソース、スープ、シチュー、パン、ケーキ、クッキー、キュラソー、キュンメル、アブサント
バジル パスタ、エビ、カ二、卵、トマト、チーズ
スパゲッティーバジリコ、ドレッシング
ペパーミント 果実、砂糖、フルーツ、いんげん
デザート、いんげんのソテー、ハーブティー

Qスタータースパイスとは何ですか?

A

インド料理で、調理の最初の段階に炒めて香りを引き出して使用するスパイスのことをスタータースパイスといいます。
スタータースパイスとして使われる代表的なものにクミンシード、マスタードシードなどが挙げられます。

インド料理では、調理の最初(材料を炒める前)にホールのスパイスを油で炒め、その香りを充分に引き出してからその他の具材を炒めるという調理手法がよくとられます。

この調理の最初の段階で使用するスパイスのことをスタータースパイスと呼び、クミンシードが代表的な存在で、他に、マスタードシードやフェネグリーク、パンチフォロン(インドのミックススパイス)などもスタータースパイスとして使われることがあります。調理の最初の段階でじっくり炒めることで、ホールスパイスの香りを充分に引き出すことができ、インド料理独特の、スパイシーで香り高い風味に仕上がります。

例えばカレーを作るとき、まず玉ねぎなどの具材を炒めるところから始めることが多いと思いますが、その前に油でクミンシード炒めて香りを出すというひと手間を加えるだけで、香ばしく本格的なカレーを楽しむことができます。
具体的には、カレー4人前に対し、クミンシード小さじ1/2が使用量の目安です。鍋に油を入れて火にかけ、分量のクミンシードのうち2~3粒加えてみて、シューッと細かい泡が出るようになったら、残りのクミンシードを入れてきつね色になるまでよく炒めます。そこに、いつも通りの順で具材を加えて炒めましょう。

簡単ですので、ぜひお試し下さい。

Qスパイス&ハーブ(ドライ)の保存方法は?

A

スパイスの嫌いな光・熱・湿気をさければいいのです。冷暗所に保存するのが一番です。日頃の使い方にも注意しましょう。香りが弱くなったり、色が変わったら買い換えのタイミングです。

イメージせっかくやる気になってスパイス料理にいざ挑戦!と言う時にスパイスがだめになっていた…では気持ちも萎えてしまいます。スパイスの上手な保存は、グッドスパイスクッキングの最低限の条件です。

上手な保存方法とはスパイスの本質であり生命である香り、色を失わせないようにすることです。色・香りの大敵は光・熱・湿気です。要するにこれを避ければいいのです。勿論蓋はしっかりしめておきましょう。ですから一番いい保管場所は冷暗所ということになります。冷蔵庫に入れる方もいらっしゃいますが、湿気を防ぐ意味でこれもしっかり蓋をしておきましょう。

スパイスを長持ちさせるには保存だけでなく、普段の料理場面でも気を付けた方がいいことがあります。スパイスのビンを火のそばに置きっぱなしにしていませんか?火からはできるだけ離した場所におきましょう。

またできることなら、びんの振り出し口から直接、フライパンや鍋に振りかけるのは避けたいものです。湯気でスパイスが湿気を吸ってしまい、そして固まってしまう可能性があります。それに適量を越えたスパイスを入れすぎてせっかくの料理が台なしということもありえます。

一度スプーンに振り出して使う、あるいは手のひらに振り出してそれから料理に入れてもいいでしょう。そうすれば中身を湿気や熱から守ることもできますし、適量を確認できるというメリットもあります。

スパイス&ハーブ クッキング (フレッシュハーブを使ってみよう)

Qフレッシュハーブ(生のハーブ)ってどうやって使うのですか?

A

生のまま料理に飾ったり、サラダに散らしたり。また、煮込み料理に加えたり、肉や魚と一緒に焼いたり、炒めたりします。さらに、ハーブティーという楽しみ方もあります。

さわやかで新鮮な香りが人気のフレッシュハーブですが、料理を香り高くそして彩りよくしてくれます。ドライ(乾燥させたもの)のスパイス&ハーブと一緒で、素材との相性を少しずつ覚えるとその楽しみも広がります。

お店でフレッシュハーブを買ったら、食べる前に軽く洗って、キッチンペーパーなどで水気をとるようにしましょう。

スパイス&ハーブ 料理初心者ガイド
「フレッシュハーブを使いこなすテクニック!」はこちら

作り方

  • 1.ティーポットなどの蓋のできる道具にハーブを入れ、沸かしたてのお湯を注ぎ、蓋をします。
  • 2.2~3分待ってからカップに注ぎます。長く置くとせっかくの香りや風味が損なわれてしまうので注意!

フレッシュハーブの量は、一人分あたり、ティースプーン山盛り3杯が目安。
でも目分量で大丈夫。甘みが欲しい場合は、ハチミツがおすすめです。やさしい甘みと相性ぴったりです。

ではここで、ハーブティのおすすめレシピをご紹介しておきます。

レシピ

  • 初めての方でも飲みやすいレシピ
    レモンバーム、ペパーミント、タイムを2:1:0.5の割合で。
  • 暑くて食欲不振のときにおすすめのレシピ
    (冷ましてから冷蔵庫に入れ、アイスハーブティーにして飲んでみてください。スッキリとしてやさしい味わいです。)
    レモングラス、ペパーミント、シナモン(レモングラスを主体に、ペパーミントひとつまみ、シナモンをひとかけら)

Qフレッシュハーブはどうやって保存すればいいのですか?

A

保存方法は野菜と同じ。ポイントは、「低温」「適度な湿度」「傷めない」の3つです。

野菜用の袋や、密封できる容器などに入れて冷蔵庫の野菜室に保存します。また、茎の切り口に湿らしたティッシュペーパーやキッチンペーパーを巻きつけておくのも、長持ちさせる方法のひとつです。また、植物が生育しているのと同じように、立てた状態で冷蔵庫に入れることが出来れば理想的です。

注意したいのは「バジル」で、低温で長期保存すると品質が落ちることがあります。密閉容器に入れて、15度くらいの涼しい場所に保存します。食べるときには、水洗いを避けて、汚れたところをふき取るようにします。

Qフレッシュハーブのいい使いみちはありませんか?

A

おすすめは、ハーブオイルやハーブビネガーにする方法。様々な料理にハーブの香りを簡単に付与することが出来ます。また、ハーブを煮出して濃い目のハーブティーを作ると、色んなことに使えます。

フレッシュハーブが使い切れずに残ったときにぜひ作りたいのが、ハーブオイルやハーブビネガーです。どちらも基本はハーブの香りをオイルや酢に移すだけですから、ハーブの数だけ作ることができます。(いくつかのハーブを混ぜるのもいいですよ!)

ハーブオイルはそのままドレッシングに使ったり、通常の料理の際の油として使ったりします。ハーブビネガーは、食卓においてレモンの代わりにふりかけるなど、用途は自由自在。

オイルに適したハーブ スイートバジル、セージ、タイム、ディル、ローズマリー、フレンチタラゴン、フェンネルなど
ビネガーに適したハーブ スイートバジル、ミント、セージ、タイム、チャービル、ディル、ローズマリー、オレガノ、フレンチタラゴン、フェンネルなど

また、余ったハーブを煮出して濃い目のハーブティーを作っておくと、色んなことに使えます。どんな風に使えるのかをご紹介しておきます。

例えば・・・・・・

  • バスタブに2~3カップ分入れて、入浴剤にする。
    簡単にさわやかなハーブバスを楽しむことが出来ます。ただし、肌の敏感な方は注意が必要です。ローズマリー、ミント、レモングラスなどがオススメです。
  • お客様に出すおしぼり作りに。
    夏であれば、氷を入れたハーブティーでおしぼりを作ってみてください。さわやかな香りのおしぼりになりますよ。レモングラス・レモンバーム・ミントなどがオススメです。
  • うがいに利用。
    抗菌作用の強い、タイムやセージがオススメです。

スパイス&ハーブと健康

Qスパイスやハーブが薬にも使われているって本当ですか?

A

スパイスやハーブは古くから薬としても用いられてきました。現在でも、漢方薬の成分欄のなかに、スパイスやハーブの名前を見つけることができます。

くからスパイス&ハーブは、経験的に薬効があることが明らかにされ、生活の中で薬として用いられてきました。現在でも、薬として用いられているスパイスやハーブはたくさんあります。例えば、市販の漢方胃腸薬に使われている成分欄を見てみますと、次のように記載されています。

成分:ケイヒ、エンゴサク、ボレイ、ウイキョウ、シュクシャ、カンゾウ、リョウキョウ

この中でケイヒはシナモン、ウイキョウはフェンネル、カンゾウはリカリス、リョウキョウはガランガルというスパイスの別名です。市販の漢方胃腸薬のもとになっているのは、安中散という漢方処方ですが、これには必ずシナモン、フェンネル、リカリス、ガランガルの各スパイスが使われます。
また、市販の風邪薬である「葛根湯」も代表的な漢方処方ですが、やはり、ジンジャー(しょうが)、シナモン、リカリスというスパイスが使われています。

漢方処方に使われている成分は生薬(しょうやく)と呼ばれていますが、上記のようにスパイスが多く含まれています。漢方薬に、生薬として使われている代表的なスパイスを紹介します。

スパイス名 生薬としての呼び名
唐がらし 蕃椒(ばんしょう)、辣椒(らっしょう)
シナモン 桂皮
備考:一般用医薬品210処方中、64処方に使用
ジンジャー 生姜(しょうきょう)-生のもの
乾姜(かんきょう)-乾燥させたもの
備考:一般用医薬品210処方中、約90処方に使用
サフラン 蕃紅花(ばんこうか)
クローブ 丁子(ちょうじ)、丁香(ちょうこう)

Q最近注目されている、スパイスやハーブの新しい機能性って何ですか?

A

ひとつは「料理の減塩効果」、もうひとつは「生体調整機能」です。つまり、スパイスやハーブが身体の健康の役に立ってくれる働きのことです。

スパイスやハーブは、古くから健康への効果が経験的に明らかにされ、生活の中にたくみに取り入れられ、薬としても用いられてきました。しかし、ここ最近は、新しい観点から注目が高まっています。

近年、深刻な問題となっているのが「生活習慣病」と呼ばれる、ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病などの病気の増加です。これらの病気は痛みなどの自覚症状が現れないうちに進行し、最終的に命を奪うことにもなりかねない怖い病気です。以前は、病気を早期に発見し、早期に治療する「早期発見早期治療」が重要視されていましたが、最近では、「病気にならないように、いかに予防するか」に軸足が移ってきました。

では、生活習慣病を予防するにはどうすればよいのでしょうか。生活習慣病は、その名前のとおり、生活習慣、とくに食生活習慣との関わりが深いと言われ(詳しくはこちらへ)、高カロリー、高脂肪、塩分の過剰摂取が特に問題視されています。いかにカロリー、脂肪、塩分を適量にしていくかが予防のキーポイントなのです。

そんな中で、スパイスやハーブに関心が高まっていますが、その理由は主に2つあります。

ひとつは、スパイスやハーブを食事に取り入れることにより、食事から塩分を減らしたときの物足りなさを補ってくれるということ。つまり減塩効果です。その効果は、カレーライスを考えてみるとお分かりいただけるのではないでしょうか。

カレーは「味が濃く、塩分も多いのでは?」と考えられがちですが、カレーライス一皿あたりの塩分は約2gなのです!一日の塩分摂取量の目標値は10g以下とされていますから、塩分の観点からは非常に優秀な食事なのです。塩分は少なくても、カレーの中のスパイスやハーブの持つ辛さや香りが満足感を与えてくれているのです。

もうひとつは、スパイス&ハーブそのものが持っている有効成分です。1990年に、アメリカの国立ガン研究所が中心となってスタートした「デザイナーフーズプロジェクト」というものがあります。これは、植物性食品に含まれているがん予防効果に着目し、その科学的な根拠を明らかにして、実際の食生活に採り入れる可能性を求めようとしたものです。
そのスタートにあたり、アメリカで長年にわたって行われてきた疫学的研究を基礎にして、がん予防に効果があると期待される野菜・果物がリストアップされ、図式化されました。それが、有名な"がん予防の可能性のある食品ピラミッド"(図1)です。

このピラミッドに登場する37品目のうち三分の一以上にあたる、実に14品目をスパイス&ハーブが占めているのです。

図1

Q注意が必要といわれる「フードファディズム」って何ですか?

A

「健康や病気へ食べものや栄養が与える影響を過大に信じたり評価すること」です。

「フードファディズム」という言葉は、まだ日本ではなじみのうすい言葉ですが、アメリカでは1950年代に、すでにこの問題が提起されはじめました。フードファディズム(food faddism)とは食べものや栄養が健康や病気に与える影響を過大に信じたり評価することをいいます。

食と健康が密接に関連していることはまぎれもない事実ですが、これは長い間の食生活習慣が健康に反映されるということであって、特定の食べものや栄養がすぐに体にどうこう作用するという話ではありません。

しかしながら現代社会においては、健康ブームも手伝って、ある食べものや食品成分が万病に効くかのような情報が流れたり、逆に深刻な悪影響を及ぼすかのような情報が多くみられます。しかし、どんなに栄養的に優れた食品であっても、それを食べるだけで、それまでの不摂生が帳消しになるようなものは存在しませんし、その食品や栄養を摂るだけでたちまち病気になるようなものも、存在しないのです。

健康な食生活の基本は、昔から言われているように「バランスの良い食事」です。日々の食生活にスパイス&ハーブをうまく利用しながら、色々な食べものや栄養素をバランスよく摂るように心がけましょう。