「香りを科学する」その7ハーブティー 香り立ちを考える
~香り成分のバランスは絶えず変化している~

最近は、多くの方々に「乾燥ハーブ」のみではなく、「生のハーブ」を用いた様々なハーブティーで、フレッシュな香りを楽しんでいただけるようになってきました。

生で用いるハーブとしては、代表的なものにスペアミントがあります。
スペアミントの「スーッ」とした香りの代表的な成分は、「L-カルボン」と「リモネン」です。
「L-カルボン」はマイルドで甘い香りで、「リモネン」はミカンの皮をすりつぶした時に感じる香りです。
そこで、今回は2つの香り成分に着目して、スペアミントを用いたハーブティーの「香り立ち」を少しだけ科学してみます。

香り立ちの測定に挑戦

生のスペアミント4枝をポットに入れてから熱湯を200ml注ぎ、蓋をして3分蒸らします。
そして、蓋をあけて、スペアミントを用いたハーブティーから、どのように香り成分が飛び出してきているかを測定したデータをもとに、イメージグラフを描いてみました。

縦軸:香り立ちの強度(イメージ) 横軸:経過時間(分) 0~1 点線:(a)蓋を開けた瞬間 リモネン L-カルボンスペアミントを用いたハーブティーの香り成分測定データイメージ

グラフをご覧いただくと、(a)蓋をあけた瞬間のラインの直後で縦に大きく伸びます。
この部分から、「リモネン」も「L-カルボン」も、ティーポットから、一斉に飛び出しているのがわかります。
そのあとの両成分の飛び出し方はグラフの通り異なり、そして、最終的には平衡状態になります。
このグラフからは、秒単位の短時間で、香り成分のバランスが絶えず変化していることが読み取れ、香りの質も秒単位で変化していることが示されています。
スペアミントを用いたハーブティーの香りが、いつも同じ香りのイメージに感じてしまうのは、このような瞬間的な香りの変化を、人は総合的に認識して、"香り立ち"というイメージを持ってしまうからなのかもしれません。 身近なところにも、不思議な現象は存在しているものですね。

香り立ちを測定した分析システム
写真提供 株式会社島津製作所、株式会社バイオクロマト、エーエムアール株式会社