トップメッセージ

エスビー食品株式会社 代表取締役社長

エスビー食品株式会社 代表取締役社長

はじめに

私たちエスビー食品グループは本年、創業100周年を迎えました。これもひとえに皆様の温かいご支援、ご愛顧のおかげであり、心より感謝申し上げます。

創業以来、私たちは地の恵みであるスパイスとハーブを活かして、味と品質にこだわった製品づくりを続けてまいりました。この先も、社会と私たち企業が持続可能であるためには、人々の暮らしを便利で快適にすることと、地球環境保全に取り組むこと、その両方が不可欠です。

創業100周年を機に、新たなコーポレートメッセージ「そこに、スパイス&ハーブ」を制定しました。このメッセージには、スパイスとハーブを核とした事業展開を通じて、おいしさだけでなく、健康的で安心できる食を世界に向けて発信するとともに、植物と食のサステナブルな事業を通じて、地球との共生も目指すという思いを込めています。

次なる100年もステークホルダーの皆様に私たちの価値を認め続けていただけるよう、企業理念「食卓に、自然としあわせを。」のもと、社会から必要とされる人・企業を目指してまいります。

私たちが目指すもの

当社グループは「『地の恵み スパイス&ハーブ』の可能性を追求し、おいしく、健やかで、明るい未来をカタチにします。」というビジョンの実現を目指しています。

1923年(大正12年)、創業者・山崎峯次郎が日本で初めて国産カレー粉の製造に成功して以来、当社グループはカレー、コショー、わさびをはじめとした香辛料や調味料、インスタント食品など、スパイスとハーブを身近に感じていただけるさまざまな製品をお届けしてまいりました。

そしていま、グローバル化やデジタル化といった社会環境の変化が進むなかで、個人の嗜好や価値観、生活様式も多種多様となり、食に対するニーズは複雑化・高度化が進むものと考えられます。また一方で、気候変動やそれに起因する食料危機、短期的な利益追求による資源枯渇や廃棄物の増加といった社会課題に対しては、一刻も早い対処が必要な状況にあります。

これからも香辛料のトップメーカーとして、スパイスとハーブをはじめとした食の進化・発展を追求するとともに、産地から食卓までの環境負荷の低減や社会・環境・人権に配慮した持続可能な原材料調達および製品供給を通じ、社会課題の解決にも取り組んでまいります。

第2次中期経営計画の振り返りと第3次中期経営計画

第2次中期経営計画の振り返り

2020年4月より取り組んできた第2次中期経営計画の期間におきましては、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻など、事業活動に大きな影響を与える出来事が連続して生じました。最終年度である2023年3月期は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され、日常生活や経済活動に正常化の動きが見られました。一方、ウクライナ情勢長期化の影響等による原材料の価格高騰や供給面での制約に加え、急激な円安の進行などから、先行きは依然として不透明な状況が続きました。食品業界では、外食需要の回復の動きといった消費行動や市場構造の変化、原材料・エネルギー価格の高騰等の要因により物価上昇が続いているほか、さらなる物価上昇懸念等の先行きへの不安からお客様の節約志向が高まるなど、引き続き厳しい経営環境となりました。

第2次中期経営計画の財務目標につきましては、最終年度である2023年3月期に売上高1,190億円、営業利益85億円の達成を目指しました。売上高については、外食需要の回復の動きが進んだことに加え、ゴールデンカレーやパウダールウ製品などが堅調に推移したことなどから、目標を達成しました。営業利益については、1年目・2年目で目標値を超えたものの、原材料価格等の高騰が合理化や効率化などの企業努力では吸収できない状況となり、2022年6月以降、さまざまな製品で価格改定の実施に至りましたが、最終年度の営業利益は目標値に届かない大変厳しい結果となりました。

非財務目標については、持続可能な調達への取組みを着実に進めてまいりました。また、働き方に関する従業員一人ひとりの意識向上やダイバーシティを推進する風土の醸成、そして従業員の健康推進に一定の成果を得ることができました。

今後の課題として、当社グループがステークホルダーの皆様からより多くの信頼と共感を得るためには、事業活動がWell-beingやサステナブルに資するものであるかを常に考えつつ、利益志向への転換と収益構造の改革を実行することが必要です。そして、重点分野の強化継続と将来を見据えた新規事業やビジネスモデルの創造によって事業規模と利益の拡大を進めていかなければならないと考えています。

第3次中期経営計画

2023年4月から2026年3月を計画期間とする第3次中期経営計画を策定するにあたり、当社グループの目指す未来の実現に向けては、私たちには挑戦的改革による成長が欠かせないと考えました。そこで、長期テーマとして「20年後の2043年に海外売上高比率40%超を目指すこと」「スパイスやハーブの研究を加速させるとともに、栽培技術の獲得や産地開発への取組みをさらに深めること」「これらの取組みをより確かなものにするために、グローバル人財・デジタル人財・研究者などの育成に向けた教育を進めること」の3つを設定いたしました。

また、社会環境が大きく変化を続けるなかで、企業や製品に求められるものはこれまで以上に多岐にわたっています。当社グループでは社会に価値を提供する企業として永続的に存在し、成長し続けるため、重要度の高い課題「マテリアリティ」を特定し、活動目標として「エスビー食品ミッション」を掲げております。このミッションのもと、事業を通じてSDGsの達成に寄与することを目指し、活動テーマに沿った事業活動を進めております。この度の第3次中期経営計画では、「『地の恵み スパイス&ハーブ』を核とした事業により、世界の食の進化・発展と、持続可能な未来の実現に貢献します。」という基本方針のもと、「価値ある製品の提供」「成長分野への投資」「持続可能な事業の実現」「人と組織の活性化」「地球との共生」の5つの重点戦略を、それぞれの遂行に向けて立案した重点施策を中心に進めてまいります。

最終年度である2026年3月期の財務目標につきましては、2024年3月に予定している調理済食品事業の譲渡による影響がありますが、海外事業の拡大などにより補うことを計画しております。

非財務目標につきましては「エスビー食品ミッション」に対応する形で12の評価指標を設定しており、それぞれの目標達成に向けた取組みを通じて、社会課題の解決に貢献するとともに、ビジョンの実現へと歩みを進めてまいります。

第3次中期経営計画PDFファイルを開きます

サステナビリティへの取組み

「地の恵み」を事業の核として活動している当社グループにとって、サステナビリティへの取組みは、社会や環境との調和を図り、理念・ビジョン・行動規範に基づく事業活動を行うことそのものです。

サステナビリティに関する目標設定や進捗状況のモニタリング、達成内容の評価については、取締役会の直轄組織であるサステナビリティ委員会を中心に進めています。

また、2023年4月より当社事業に関わるすべての人々の人権尊重の強化を目的にサステナビリティ委員会内に人権部会を新設いたしました。人権部会においては、サステナビリティ調達推進部会ならびにリスクマネジメント委員会およびその下部組織のコンプライアンス部会と連携しながら、当社グループの人権デュー・デリジェンス体制の構築と運用を推進してまいります。

原材料調達においては、2019年5月に制定した「持続可能な調達に関するコミットメント」を2023年6月に改訂し、当初の目標よりも一歩踏み込んだRSPO認証パーム油・FSC認証紙切替え目標の設定や主要香辛料の対象範囲の拡大を行いました。

研究開発・製品開発においては、お客様の視点に立って、安全・安心で価値ある製品や社会・環境・人権に配慮した製品の開発を進めています。また、安全・安心への取組み強化については、生産履歴に関する情報管理システムの充実や、生産現場での作業品質の向上などに引き続き取り組んでまいります。

重要な経営戦略の一つであるダイバーシティ・マネジメントについては、「新しい働き方」の推進に力を入れるとともに、組織の人財多様化を推進し、多様な人財が活躍し働きがいを感じられる職場の実現に向け、プラチナくるみん認定の維持や健康経営優良法人の継続取得、従業員エンゲージメントの向上などに取り組んでまいります。

コーポレート・ガバナンスについては、執行役員制度のもと、取締役と執行役員の役割を明確にすることで、意思決定と業務執行のスピードアップを図り、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応するとともに、取締役会の実効性を高めるための取組みを継続して進めてまいります。また、当社グループ全体の内部統制の充実を図るとともに、企業活動を取り巻くさまざまなリスクに対してはリスクマネジメント委員会を中心として、継続的に管理体制を強化してまいります。

持続的な成長と企業価値向上を目指して

これからも、「地の恵み スパイス&ハーブ」を常に進化させ、お客様に認めていただける価値と当社の独自性を強化した製品の提供を通じ、持続的な成長を目指してまいります。

経営環境がどのように変化しようとも、「自然」と共生しながら、「食卓」を豊かにし、世界の人々の「しあわせ」に貢献していくという私たちの使命とビジョンは変わりません。第3次中期経営計画の各施策に取り組むことで、食品メーカーとしての使命を果たすとともに、常に新たな価値を提供し続け、社会的価値と経済的価値を創出してまいります。

100周年という記念すべき年にリーダーであることへの責任とやりがいを強く感じつつ、ステークホルダーの皆様からのご期待にしっかりとお応えするよう取り組む所存です。

今後ともご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。