香り豊かでスパイシーな味わいを楽しむことができる、カレー。
カレーの魅力は、スパイス・具材・味わい・とろみ・香りなどを好みに合わせて自由自在に組み合わせられることが挙げられます。
皆さんは、どのようなカレーがお好きですか。今回は、カレーのとろみと香りの関係を見てみましょう。
実験方法
今回は、「とろみの強いカレー」「とろみの弱いカレー」ソースそれぞれについて、喫食時に鼻に抜けてゆく香りの変化を確認し、とろみの違いによるスパイス感の比較を行ないました。
手順1カレーソースを用意する
とろみ以外は、材料の種類も量も温度も全く同じ条件のカレーソースを2種類用意します。
A:とろみの強いカレーソース(イメージ)
B:とろみの弱いスープ状カレーソース(イメージ)
手順2白飯にソースをかけて食べます
カレー用スプーンに白飯をのせたものを2つ用意し、①のA・Bのソースをそれぞれ別のスプーンにかけて食べます※。
※Bは白飯をひたす状態
A:とろみの強いカレーソース(イメージ)
B:とろみの弱いスープ状カレーソース(イメージ)
手順3計測します
食べている最中に鼻から抜けてゆく、カレー由来の香気成分をDART-MSシステム※で計測します。
※DART-MSシステム:リアルタイムで連続的に揮発性成分が測定できるシステムです。
カレーを食べた際に放出される香気成分の測定イメージ
下記のグラフ1は「A:とろみの強いカレー」ソースを、グラフ2は「B:とろみの弱いカレー」ソースをそれぞれひと口食べた際、カレー由来の香気成分が放出される強度を時系列で表現したイメージです。
グラフ1「A:とろみの強いカレー」ソースにおけるカレー由来の香気成分の測定イメージ
食べているときに感じる香り
すっきりとしたインパクトのある香り
鼻から抜ける香気成分の状況(グラフ1)
- (1)急激に香りが鼻に抜ける
- (2)瞬間の最大香気成分量が多い
- (3)急激に香りがなくなってゆく
グラフ2「B:とろみの弱いカレー」ソースにおけるカレー由来の香気成分の測定イメージ
食べているときに感じる香り
後引きのあるマイルドな香り
鼻から抜ける香気成分の状況(グラフ1)
- (1)比較的ゆっくりと香りが鼻に抜ける
- (2)瞬間の最大香気成分量が少ない
- (3)ゆっくりと香りがなくなってゆく
グラフ1および2では、咀嚼開始後の香りの立ち上がりポイントをS、最大ポイントをT、立ち下がりポイントをFとします。
2つのグラフを比較すると、グラフ1は、SからT、TからFそれぞれの推移が急角度のため、香気成分量の最大ポイントが訪れるタイミングが早く、その後、急激に衰退しています。感じる香りは、すっきりとしたインパクトのある香りです。
逆にグラフ2は、グラフ1と比較して、SからT、TからFそれぞれ緩やかな角度で推移し、SからFの間隔が長くなっています。また、最大ポイントは低く、グラフ1よりなだらかなグラフです。感じる香りは、後引きのあるマイルドな香りです。
グラフ1、2からわかるように、カレーソースのとろみの違いは、食べた後に香りが鼻へと抜けるスピードを変え、カレーの香り立ちを表す指標となります。1秒単位という短い時間の中での変化ですが、実際に感じるカレー風味の感じ方に影響しているのかもしれません。
普段のレシピに、質感のこだわりを加え、香りの変化を楽しんでみませんか。