日本の食文化と
スパイス&ハーブ

日本の伝統的な食文化「和食」は、自然を尊び、旬の食材を活かし、季節の移ろいを食卓に映しながら、人と人とのつながりを育んできた食文化です。

この和食文化の中で、スパイスやハーブは「薬味」としての役割を担ってきました。香りや辛み、彩りを添えることで、素材の持ち味を引き立て、料理をより豊かに仕上げる存在です。
これは、かつて新鮮な食材が手に入りにくかったヨーロッパや東南アジア諸国において、防腐や臭み消しを目的にスパイスが多く用いられてきたのとは対照的であり、新鮮な海山の幸を入手しやすい日本では、そうした目的でのスパイスの必要性は比較的低かったと考えられます。
このため、使用法も、主役として全面に出ることは少なく、食材の持ち味を損ねない程度に、少量添えるような使い方が多く見られます。

「和食」とは?

2013年12月、ユネスコ無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」が登録されました。
ここでは、「和食」を料理そのものではなく、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」と位置付けています。

料理ごとにみる
スパイス&ハーブの使い方

  • 刺身

    生魚をおいしく食べるための工夫として、また昔から食材を安心して味わうための知恵として広く使われてきました。

    刺身

    わさび・しょうが・にんにく・その他(山椒・しそ・からし・ミョウガ・たでなど)

  • 煮物

    臭み消しや、風味・辛み・色づけを目的に、素材と一緒に煮込んだり、仕上げに添えたりして使われます。

    煮物

    しょうが・にんにく・唐辛子・その他(山椒・しそ・からし・ゆず・くちなしの実・三つ葉)

  • 焼物

    醤油や味噌などとともに素材を漬け込んだり、仕上げにかけたりして、風味を加えます。

    焼物

    わさび・しょうが・唐辛子・その他(山椒・しそ・ゆず・けしの実・ごま・かぼす・すだち)

  • 和え物・揚げ物

    素材と混ぜ合わせたり、仕上げにかけたり、つゆや塩と合わせることで風味を加えます。

    和え物・揚げ物

    わさび・しょうが・その他(山椒・しそ・ごま・かぼす・すだち)

  • 汁物

    吸い口として、季節に合わせたスパイスやハーブが使われることが多いのが特長です。

    汁物

    春:木の芽・穂じそ・三つ葉
    夏:しそ・ミョウガ・青ゆず・実山椒
    秋:ゆず・ミョウガ・しその実
    冬:せり・すだち

日本における
スパイス&ハーブの歴史

日本のもっとも古い歴史書である『古事記』(712年)には、しょうがや山椒などを指すとされる「はじかみ」や蒜(にんにく)の名が見られます。また、東大寺『正倉院文書』に含まれる正税帳(天平年間・8世紀前半)には胡麻子(ごま)が記されており、『延喜式』(927年)には干薑(乾しょうが)や芥子(からし)、さらににんにくの栽培や貢進に関する規定が確認できます。『本草和名』(918年)には山葵(わさび)の名も登場し、これらの香辛植物が古くから日本で利用・認識されていたことがわかります。

一方、こしょうなどの熱帯地方原産のスパイスは、聖武天皇の時代(724~749年)にはすでに日本に伝えられていました。正倉院宝物の中には、こしょうのほか、丁香(クローブ)や桂心(シナモン)が収められており、いずれも貴重な薬として渡来したものと考えられています。

その後も、中国との交易や中世ヨーロッパ人の来航、日本から東南アジア諸国への渡航、近世の御朱印船貿易などを通じて、スパイスは継続的に日本にもたらされていきました。

日本の食文化に関わる代表的な
スパイス&ハーブ