ハーブが香る 南欧の旅

2010年秋、ハーブのふるさと・南欧を訪れました。フランス・プロヴァンス地方に始まり、コルシカ島、コートダジュール、そしてイタリア・ジェノバへの旅路で出会った風景や料理をご紹介します。

2010/10/22

バジルの香りに包まれる ~ジェノバ~

朝早くニースを出発し、イタリアはバジルの本場ジェノバへ!海岸線に沿って東に進みます。

フランスのコートダジュールから続くイタリアのリグーリア州までの地中海沿岸の地域は、イタリア語で「海岸」を意味する言葉「リヴィエラ」の名で知られています。
車窓からは、海岸線の傾斜にたくさん温室が建っている様子が見えました。この辺りはアイリスやバラなど花の栽培が盛んで、「花のリヴィエラ」とも呼ばれています。

ニースから車で走ること3時間半・・・ジェノバに到着しました!
ジェノバには紀元前6世紀頃から人が住み始めたと言われ、独立国としての歴史も古く、港が栄えてきました。
そしてジェノバで有名なのが、なんと言っても「ジェノベーゼ」と呼ばれるバジルペースト
ジェノバでは「ペースト」といえば、普通バジルのペーストを指します。

まず、ジェノバにあるバジル協会(Parco del Basilico)を訪問しました。

バジル協会の事務所

この協会は、1999年に設立され、バジルを始めとする地元の農産業のプロモーションや発展を支援したり、食育活動に取り組んだりされているそうです。

ちなみに、石造りのように見えますが、これ、実は平らな壁に描かれた絵。
室内にもこのような仕掛けが施されていることがあり、何もない平面を立体的に見せています。

協会の事務所として使われているこの建物は、1629年に建てられた歴史あるもの。中は子供向けのレクチャーを行うスペースやジェノバ農業や農産物の紹介パネルなどがありました。

1800年代のキッチンも保存されています。

バジル協会訪問の後、農園を見に行く前に、フェッラーリ広場の近くにある「Le Terrazze del Ducale」でランチをとりました。
こちらはフェッラーリ広場の噴水。まるで映画のワンシーンみたい!広場前の建物にもだまし絵が描かれていました。

フェッラーリ広場、だまし絵が描かれた建物

今日のランチはこの3品。

パンソッティ くるみのソース(ハーブとリコッタチーズのラビオリ)、ローストポーク かかっているソースは醤油を思わせる旨みのある味でした♪、サクリパンティーナ リグーリア州のお菓子でスポンジとカスタードを重ねたケーキ

パンソッティはラビオリのように詰め物をしたパスタで、中のフィリングに様々なハーブが使われています。お店の方が、ほうれん草をベースに12種類のハーブとリコッタチーズを使っていると教えてくれました。パンソッティはくるみのソースでいただくのが定番で、リグーリア州の辺りではパスタにナッツをペーストにしたソースを合わせることが多いのですって。こってりした味わいがとても美味しかったです!

さあ、しっかり食べた後は、いよいよバジル農園へ。
バジル協会さんのご紹介を受け、バジルの生産やペースト作りを営むアルベルトさん一家の農園にお邪魔させていただきました。

温室が建っているところはかなりの急斜面です。しかしこれこそ、ジェノバでのバジル栽培が盛んになってきた要因のひとつ。バジルはインドが原産地ですが、ジェノバの温暖な気候と日当たりのよいこの地形が、バジルの栽培に適しているのです。
アルベルトさんの先導で温室へLet's Go!!

・・・予想以上の険しい道のりに息が切れます。
日頃の運動不足を悔やみつつ、なんとか登って温室に入ると・・・

見事に一面バジル!
さわやかな香りに包まれます。こちらは種をまいて25日ほど経ったところです。
アルベルトさんが収穫の様子を実演してくださいました。

板を渡し、そこを足場にして根元から手摘みしていきます。

雑草が入らないように、注意深く選りすぐりながら収穫するのはとても手間がかかりそう・・・。
しかしアルベルトさん、ものすごい手際の良さでバジルを集めていきます。
成長したものから摘み取り、だいたい3回に分けて一面に生えているバジルを摘みとるそうです。

アルベルトさんたちの愛情をたっぷり受けて育ったバジルの葉はみずみずしくて柔らかくて、このまま食べてしまいたくなるほど清々しい香り!

温室の外からは、ジェノバの港が一望できました。
アルベルトさんが子供の頃は、現在高い建物が建っている辺りも農場だったそうです。工業化とともに港も埋め立てられ、高速が造られて、農場が分断されたりなくなったりして、だいぶ景色が変わってしまったとおっしゃっていました。

続いて農園近くのペースト工場にもお邪魔し、伝統的な石臼でペーストを作るところを見せて頂きました。

材料は、バジル、松の実、にんにく、粗塩、チーズ、オリーブオイル。
バジルだけでなく、松の実、にんにくも地中海沿岸でよく使われる素材です。アルベルトさんのところでは、チーズは牛乳を原料とするグラーナパダーノと羊の乳で作ったサルデーニャ産ペコリーノの2種類を使っているそうです。
オリーブオイルは、精製していないエキストラバージンオリーブオイルと精製したオリーブオイルを7:3前後の割合でブレンドし、オリーブオイルの香りが弱いときは、エキストラバージンの割合を増やすと良いとのお話でした。エキストラバージンだけにすると、少し香りが強すぎてしまうそうです。

伝統的な石臼を使ったペースト作りを実演していただきました。臼にバジルの葉と塩を入れてつぶすところから始まり、松の実、チーズ、オリーブオイル、にんにくと順番に加えていきます。色鮮やかな出来上がり!

実際のペースト作りの様子をぜひ動画でご覧ください。

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続いては、普段の工場での製造方法と同様に、機械で作るところも見せて下さいました。

一度ペースト状にして保存したバジルを、にんにく、松の実、チーズと機械でしっかり混ぜ合わせます。

とてもなめらかなソースの出来上がり!
試食用にパンを用意してくださり、出来上がったペーストを付けて味見します。

さて、本場のバジルペーストの味わいは?

・・・うーん、なんてまろやかな口当たり!やはり瑞々しいバジルを使っているからでしょうか、えぐみがなく、チーズやオリーブオイル、松の実のコクにマッチしています。
もう、いくらでも食べられてしまいそう・・・!

アルベルトさんのペーストは、レストラン用を中心に販売されていて、スーパーなどではなかなか手に入らないため、この工場に直接買いに来る方もいらっしゃるそうです。ファンが多いのも納得のお味でした。

イタリアでも、こうして周りの環境がどんどん変わっていく中で、伝統の味を作り続けている人たちがいるのですよね。地域の食材で生まれた食文化は、こうして人々の手によって受け継がれているんだなと改めて感じました。これからも美味しいペーストを伝えていって欲しいです。

本場のジェノベーゼ体験は次の記事にも続きます♪

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