BREWERY
“クラフト”の世界に正解はあらず!
自由が楽しいカレーとクラフトビール。
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近年、人気が高まるスパイスカレーとクラフトビール。その理由とは?

ここ数年スパイスカレーとクラフトビールのシーンが特に盛り上がっているように感じますが、どういった背景があると思いますか?

スパイスカレーもクラフトビールも、スパイスやハーブを使うことが共通点ですが、使い方についてこだわりや意識していることはありますか?
一般的なビールではスパイスは使わないので、使うからには個性を感じてもらえる方が、選びやすいし楽しみにも繋がるのではと。スパイスは少量でも効いてきますし、飲み込んだ時の香りが爽やかになったり、ふくよかになったりします。あくまで、アクセントとして使うようにしていますね。
味わいが無限に広がる。スパイスカレー×クラフトビールのペアリング

伊東さんが監修された『S&B CRAFT STYLE スパイスカレー』には、どんなこだわりが詰まっていますか?
このキットのいいところは、これさえ買って置けば、あとは食材を揃えればOKなところ!スパイスをたくさん揃えるのはハードルが高いし、封を開けると香りが出ていってしまうのでスパイスは鮮度が大事。使い切りできる分量で個包装になっているのもポイントです。



数学の世界では“パーフェクトナンバー”として知られる完全数、496からネーミングの着想を得た『豊潤〈496〉』。「調和のとれたビールを目指して作られました」と古川さん。
『S&B CRAFT STYLE スパイスカレー』には、どのクラフトビールがおすすめですか?
もう1本は、柚子ピールと山椒を使った『Daydream』。クラフトビールに、コリアンダーとオレンジピールを使うことは世界的にも多いのですが、それを日本の文脈で解釈した結果が、柚子と山椒でした。ビールは通常、最後の工程で濾過するので透明になりますが、これは無濾過で少し濁っています。あえて濾過しないことで、素材の味わいがより強く感じられるんです。

実際にクラフトビールとスパイスカレーのペアリングをしてみていかがですか?
スパイス料理とクラフトビールを合わせるときのポイントを教えてください。
でも、その真逆もあります。爽やかな風味のカレーに、黒ビールのような濃くてしっかりとした味わいのクラフトビールを合わせるというのも、意外性があっていい。最近はビールの選択肢が広いから、いろいろなチョイスが楽しめますね。

もっちりとした泡と柔らかな味わいに、柚子ピールと山椒の爽やかな風味をほのかにきかせた、和のホワイトビールタイプの『Daydream』。「柚子の香りがとてもフルーティおいしいです」とおいしさに驚く伊東さん。
カレーもビールも「正解はない」。自由に楽しむ"クラフト”の魅力。
クラフトビール、スパイス料理に共通するクラフトの楽しみとは何でしょうか?
以前、スパイスのマトリクス表を作って、深い香りや爽やかな香り、土っぽい香り、フローラルな香りなどをX軸Y軸に振り分け分類したことがあります。絶対値はなくて自分が嗅いだ感覚でいいんです。スパイスの組み合わせを考える時に、対極軸にあるスパイスを合わせたり、同じグループでまとめたりと、あれこれ試すのが楽しいんですよ。


「玉ねぎやトマトをどれくらい炒めるかでも味わいが変わるんです。同じキットでも、炒め方を変えて違った風味を楽しむことができるのは、まさに手作りの醍醐味」と伊東さん。
どちらにも、試行錯誤する楽しみがありますね。ちなみに、作る時はゴールをイメージして作るのでしょうか?
でも、それだけだと広がりが足りないから、あえて真逆の爽やかな香りのスパイスをちょっとだけ入れてみようとか。深みを感じさせるために真逆の要素をちょっと入れると、より奥深さ引き立つんです。スイカに塩みたいな感覚。そうやってバランスを考えながらスパイスをミックスして、ゴールに向かって作ります。

古川さんが企画から開発を担当した『JAZZBERRY』。麦芽とホップにラズベリー果汁を加え、ワイン酵母で醸造した華やかな酸味が特徴のフルーツビール。
いや〜、今日は新しい発見がたくさんありました。「自由」と「アドリブ」は、まさにジャズの要素が満載です。そしてそれこそクラフトの精神。ビールもカレー作りも「正解はない」。これが一番の共通点ではないでしょうか。スパイスの組み合わせも、ビールの飲み方も、カレーとの合わせ方も。ただ1つ正解を求めるんじゃなくて、自分の好きな味を追求して、自分が想像した味に向かっていく楽しさを、とことん味わいたいですね。

お話を聞いた人
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東京カリ〜番長 リーダー
伊東 盛さん広いジャンルのカレーを提案する出張料理人集団「東京カリ~番長」のリーダーとして、「二度と同じカレーは作らない!」を合言葉に、全国各地イベントなどでオリジナルカレーを提供。雑誌やウェブ等でのレシピ紹介や様々なジャンルの飲食店でメニューの開発や監修なども行う。目の前でカレーを作る「ライブクッキング」が得意。スパイスカレーの作り方を伝授する「カレーの教室」の講師も務める。
カレーの計画 -
スプリングバレー・ブルワリー東京
ヘッドブリュワー
古川淳一さん大学院で菌類の遺伝子に関する研究を行った後、2009年キリンビールに入社。醸造研究所(※当時)に配属され、ホップに関する技術開発などの業務を担当。28歳で、最年少の醸造担当としてSpring Valley Brewerlyの開発プロジェクトに参加。麦芽とホップに、ラズベリー果汁とワイン酵母を組み合わせたクラフトビール『JAZZBERRY』を開発。キリンビール岡山工場での勤務を経て、現在はSVB東京のヘッドブリュワーとして年間数十種類ものクラフトビールを作り続ける。
SPRING VALLEY BREWERY
- Photo: Ryo Tsuchida
- Interview&Text: Hitomi Takano

お話に登場したカレー

お話に登場したビール
