豆知識
スパイスの香りを油に引き出す
~「テンパリング」「スタータースパイス」「タルカ」~
世界各国の料理では、ホールスパイスを油で炒め、その香りをしっかり引き出してから油とスパイスごとを料理に使うという手法が取られますが、特にインド料理では、これを「テンパリング」と呼びます。
テンパリングは、主に、料理の始め(材料の炒め始め)と終わり(仕上げ)の、2つのタイミングで香りづけに活用されています。
炒め始めに使う場合
材料を炒め始める前に、多めの油でホールスパイスを熱し、ここに材料を加えて炒めます。油を介してスパイス香りが全体に広がり、カレーや炒め物を香り高く仕上げます。
ここで使われるスパイスを「スタータースパイス」と呼び、その代表格がクミンシードです。
スタータースパイスは、特別なインド料理に限らず、いつものカレーを作るときに、具材の炒め始めに使うのもおすすめです。その他、野菜炒めやチャーハンなどにも応用ができます。
料理の仕上げに加える「香味油」として使う場合
スパイスを油で加熱して香りを引き出し、料理の途中または最後に加えます。香りとスパイスの食感のアクセントが加わります。インド料理では、「タルカ」とも呼ばれる手法です。
使用するスパイスは、スタータースパイスと共通するものが多いですが、南インドでは、カレーリーフが仕上げの香りづけに使うハーブとして、欠かせない存在となっています。
テンパリングに使われる代表的なスパイス
1種類でも数種類組み合わせて使っても構いません。使い方も地域などによって少しずつ異なり、明確に定まったものはそれほどありませんが、スパイスの焦げやすさや香りの揮発のしやすさなどにより、油に入れるタイミング(冷たい油のうちに加えるか、少し熱した油に加えるかなど)の傾向がみられます。ここではおすすめのタイミングをご紹介します。
クミンシード
スタータースパイスの代表格。炒めることで香ばしい香り立ちがあります。鶏肉や野菜とよく合い、さまざまな料理に応用がききやすいスパイスです。まずはこちらからお試しください。
マスタードシード
独特の香りと辛み、プチっとした食感が魅力のスパイス。インドでは、黒からしという種類が特に南部や東部の地域でスタータースパイスとして使用されています。S&Bマスタードシードは黒からしとは種類が異なり、ややマイルドな風味ですが、スタータースパイスとして活用することができます。
使うタイミング:冷たい油から
インドでは中温に熱した油に加えることも多いですが、油が高温になるとはじけて跳ねやすいため、冷たい油から加えることをおすすめします。
-
※炒めた後、取り除く必要はありません。
シナモン
クローブ
カレーリーフ
独特のスパイシーな香り。野菜や魚、チキンなどとよく合わされます。
南インドやスリランカにおいて、料理の仕上げに使うテンパリングの材料として、代表的なハーブです。
使うタイミング(乾燥品の場合):冷たい油から
-
※調理後は取り除いてお召し上がりください。
唐辛子(チリーペッパー)
上記のようなスパイスと合わせて、辛みづけをするときに使われます。独特の香ばしい香りも魅力です。
使うタイミング:冷たい油からもしくは具材を加える直前
焦げやすいため冷たい油から炒めるのが基本ですが、クミンシードなど他のスパイスを熱した油に加える場合は、先に他のスパイスを炒めてから、具材を加える直前にチリーペッパーを炒めるのがおすすめです。
ヘタの部分を切って、種を取り除いてから使うと辛みが出すぎません。
-
※調理後は取り除いてお召し上がりください。
その他、フェネグリークシード※、フェンネルシード、コリアンダーシード、カルダモンなどのさまざまなホールスパイスが、テンパリングに使われているほか、生鮮のにんにくやしょうがも合わせて使われることがあります。
-
※フェネグリークシードは、業務用「セレクトスパイス」シリーズにてお取り扱いをしています。
フェネグリーク(ホール)|セレクトスパイス|エスビー食品株式会社 -
※インド料理は地域や家庭によっても大きく異なり、「タルカ」「テンパリング」などの定義については、諸説あります。