町中華とは、愛され続ける古き良き昭和の味わい

古くから地域に愛され続ける、中華料理中心の大衆食堂。それらを総称して「町中華」と呼ぶ。本格的な中華ではなく、千円以下で満腹になれるボリューム満点のラーメンやチャーハン、餃子。店によっては丼もの、洋食なども。扱うメニューは店主の裁量に委ねられる。そのゆるさもまた、町中華が愛される理由のひとつである。

ピリ辛肉あんかけ飯の素の老舗「娘娘」

ピリ辛肉あんかけ飯の素の老舗「娘娘」店内

県外からも熱狂的なファンが訪れる行列必至の有名店

40年前に開発され、時代とともに試行錯誤されてきた「スタカレー」が大人気の町中華の名店。
地元のみならず県外からも客が訪れるほどの実力派である。

ピリ辛肉あんかけ飯の名店「娘娘」のご主人

ピリ辛肉あんかけ飯の名店「娘娘」のご主人に町中華 ピリ辛肉あんかけ飯の素を試してもらいました!

ピリ辛肉あんかけ飯の名店「娘娘」のご主人に町中華 ピリ辛肉あんかけ飯の素を試してもらいました!

町中華探検隊の北尾トロです。今回は埼玉県上尾市が誇る町中華の雄、『娘娘』の登場。昼どきともなれば行列必至で、県外からわざわざ訪れるお客さんも珍しくありません。『娘娘』という店名は”にゃんにゃん”と読み、中国の民間信仰では”女神”を意味する縁起のいい名前です。

ダントツ人気は「スタカレー」と聞けばカレー味のメニューを想像するでしょうが、じつはカレー粉は一切使わず、約40年前にメニューを開発したとき、なんとなくつけた名前が人気となってそのまま定着したといいます。このアバウトさがいかにも町中華。40年間も名前を変えることなく人気メニューであり続けたことが「スタカレー」の実力を物語っているといえるでしょう。

聞けば、このメニューは最初「スタミナラーメン」として提供されていたとのこと。麻婆ラーメンは水っぽくなりがちで、豆腐を使うので値段も高くなりますが、ひき肉とニラで作れば味が締まる上、安価に作ることができるというのがアイデアの原点でした。

「スタミナラーメン」は「半ライス」をつけて頼む男性客が多く、具材をライスにかけて食べる人が多く、「ご飯もののメニューも作ってよ」と言われたことから独立させることを思いついたとのこと。

そして、試行錯誤の末にたどり着いたのが、鶏がらスープと豆板醤やごま油で作ったベースとなるスープ。仕上げ用の特製ラー油(複数の辛子に火を通して寝かせたものを使用)、味噌やザラメ砂糖などを加えることで深みとマイルドさを増し、包丁でつぶしたニンニクや生姜でパンチ力を高めたオリジナルソースが完成しました。食欲をそそるような赤い色を出すことにもこだわったそうです。辛いだけではなく、ほんのりと漂う甘じょっぱさがあるせいか、スプーンを動かす手が止まらなくなるんですよ。

ご店主直伝!家庭でできるピリ辛肉あんかけ飯の素のコツ

さあ、40年間、門外不出だったご当地メニューがどこまで再現されているか、
完成した「町中華 ピリ辛肉あんかけ飯の素」を店主の山内和人(やまうち・かずと)さん自ら調理していただきましょう。

具材は超シンプル

ピリ辛あんかけ飯 3人分の材料

※ピリ辛肉あんかけ飯の素:取材当時のパッケージです。

ピリ辛あんかけ飯 3人分の材料です。

ピリ辛あんかけ飯 3人分の材料です。
町中華 ピリ辛肉あんかけ飯の素 1回分

豚ひき肉 200g
ニラ 1/4束(約25g) ※5cm幅に切る
1+1/4カップ(250ml)
サラダ油 大さじ1

山内さん:ソースが決め手だと思ってるし、もともとが安く作れておいしいメニューを作ろうと開発したものだから、これだけでいいんです。いろいろいれると、野菜の水分で水っぽくなっちゃうよ。

手軽に作れ、水っぽくならず、ご飯との相性もいい組み合わせです。
それではつくっていきましょう。

ひき肉を炒め、ソースをからめる

フライパンを温めたら油を入れて熱し、豚ひき肉を炒めます。

十分に火が通ったら(2分間程度)、いったん火を止め、ニラとソースを入れてからめます。

山内さん:(袋からソースを絞り出しながら)難しいことは何もないけどね(笑)。まあ、ソースは使い切って欲しいですね。

秘訣その1

ソースは一滴も残さず使い切る

ていねいに絞り出していますね。

山内さん:ははは。もったいないっていうんじゃなくて、ソースを全部使ってベストな味になるように仕上げているからね。

ここで水ととろみ粉も投入するんですね。

山内さん:そうそう。粉を水で溶く必要がないので面倒さがないですよ。

1分30秒煮込む

再び火をつけて、全体をなじませながらよくかき混ぜる。煮立ってきて、とろみがついたら完成。

ダマにならないよう、混ぜながら煮込むのがいいですか?

山内さん:そうだね。焦がさないように注意して1分30秒。ひき肉を炒め始めてから5分と経ってないから「もういいの?」と思うかもしれないけど、いいんです。煮込みすぎるとソースの水分が減ってしまう。

秘訣その2

煮込み過ぎず、とろみがついたら火を止める。

あとは『娘娘』直伝のソースにおまかせください、と。

山内さん:そうそう。味が複雑だから、何度もやり取りして店の味に近づけたんだよ。もともとS&Bの一味辛子を使っていたので赤い色を出すのはうまくいったんだけど、いかにして深みを出すかで苦心しました。うちで食べたことのない人に食べてもらうんだから、妥協はできないもんね。

濃厚さとマイルドさの調和
それでは、実食!

出来上がりを確かめましょう!

では、山内さんに実食していただきましょう。

試食はされたと思いますが、完成品を食べるのは初めてだと思います。味はいかがですか?

山内さん:これはおいしい。『娘娘』の「スタカレー」そっくり…って、あたり前だけど、よくここまで再現できたなと思います。昔は辛さを優先させていたんだけど、時代とともに少しずつ味を変えて、子どもから大人まで食べられるメニューにしています。ぜひ作ってみてください。

では、僕も食べさせていただきます。

スープの複雑な味が具材に伝わり、肉のうまみも引き出される感じ。これはアツアツの状態でもう一度食べてみなければと、家で自作してみた。いいと思ったのは作り方が簡単なこと。これなら料理に慣れていない人でも楽勝で作れる。味はひとことで言うと“やみつきになる味”だ。パンチ力があるのに、食べ終えた後で、スッと辛みが引いていくのだ。実力派町中華店の底力、ここにあり!

ライター/町中華探検隊 隊長
北尾トロ(きたお・とろ)

1958年、福岡県福岡市生まれ。法政大学卒業後、フリーライターに。『夕陽に赤い町中華』(集英社インターナショナル)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(下関マグロ、竜超との共著 角川文庫)など著書多数。

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