コーラとカレーに共通する“手作り”のロマン。
クラフトは「生きること」の縮図です!



カレーとコーラは、起源が「同じ」かもしれない

コーラ小林さんがコーラにハマったきっかけを教えてください。

自分でコーラを作るようになったのはなぜですか?
そんななか、東京の下落合で漢方薬職人をしていた祖父が亡くなり、遺品を整理しに漢方工房に行ったときに家族から漢方薬作りのいろいろなエピソードを聞き、「これはコーラ作りに活かせるのでは?」と思いました。さっそく試してみたら、今までとはまったく違う、すごくおいしいコーラができあがった。会社の同僚に飲ませてみると、「…これ、お金払うから売ってくれない?」と。こうして伊良コーラが誕生し、私は会社をやめてクラフトコーラ1本でやっていくことになり、現在にいたります。
伊東さんがカレー作りにのめり込んだきっかけはなんだったのでしょう?
とはいえ当初は、東京カリ〜番長のメンバーだった水野仁輔くんが調理担当で、自分はカレーを作らない“にぎやかし”担当でした(笑)。でも途中から水野くんに作り方を教わり、自分でも作り始めたところ、すごく楽しかったんです。以降はカレーを日々作りまくるようになり、それが今も続いている形です。


対談当日は、S&B公式YOUTUBEチャンネルにてライブ配信を実施。配信の様子はこちらからご覧いただけます。
これは確かなエビデンスがあるわけではありませんが、実は私、コーラの源流は、カレーと同じくインドにあると考えています。コーラは1886年にアメリカのアトランタで、ジョン・ペンバートン博士により開発されました。彼は漢方を学んだ薬剤師ですが、スパイスの配合を見るに、この新しい飲みものを作るときに、おそらくインドのチャイをベースにしたのではないかと思われます。コーラの懐の深さも、インド起源であることからきているのではないかなと。
それくらいコーラの実は神聖でパワーがあり、それがコーラの最初のレシピに使われ、名前の語源にもなっていることに、すごくロマンを感じるんですよね。伊良コーラも、コーラの実を使っています。

コーラ小林さんが持参した「コーラの実」。カカオの実やコーヒー豆よりも多くのカフェインを含む。
スパイスには、魔法使いになったような楽しさがある

伊東さんが、カレー作りを情熱をもって続けられる理由はなんですか?
基本的に、スパイスには味がありません。味の部分は玉ねぎやトマトなどで担保するのですが、スパイスを変えただけで、その玉ねぎやトマトの味も違うものに感じられてくる。そんなふうに、香りによって味わいの感じ方がガラリと変わるのがとてもおもしろいし、それをああだこうだやっていくのがハッピーなんですよね。

小林さんは「ワクワク感」を大切にし、それを行動基準にしていると聞きました。クラフトコーラ作りには、どんなワクワクを感じているのでしょうか?
というのも、コーラ作りを始めたころは、まだ世の中にクラフトコーラという概念自体がありませんでした。コーラといえばジャンクな飲み物のイメージがあるし、コーラを手作りできるなんて誰も思っていなかった。そんななかでクラフトコーラというものが生まれたら、多くの人に「こんなものがあるのか!」と飲んでもらえるだろうと。そういった「可能性」をすごく感じていたんでしょうね。
しかも日本のみならず、世界中を見渡しても、クラフトコーラは見当たらない。そんななか、オリエンタルな文脈をもち、日本の漢方もとりいれた製品で世界に挑戦できる。そこにも大きな可能性を感じ、ワクワクしました。
香り豊かなカレー作りに欠かせない「テンパリング」とは?


さて、そろそろお腹も空いてきませんか?今日は伊良コーラの味に合わせ、伊東さんに『S&B CRAFT STYLE スパイスカレー』を少しアレンジしてもらいます。
ハーブをテンパリングするのは珍しいですよね。「バジル」を選んだ理由を教えてください。

『S&B CRAFT STYLE スパイスカレー』の作り方⑤のテンパリング工程。クミンシードが入った「仕上げテンパリングスパイス」の代わりに、バジルを小さじ1/2~1使用。熱した油に入れ、数十秒加熱し、鍋に加える。
そもそもテンパリングという工程には、どんな意味がありますか?
今回のバジルは“葉”なのでテンパリングに時間をかけず、熱した油に数十秒間さらした後、油ごとカレーに投入します。
「自分だけの正解を追求できる自由さ」こそがクラフトの魅力

カレーが完成したので、伊良コーラとあわせて試食してみてください。比較用に、仕上げのテンパリングをクミンでおこなう通常バージョンも用意しました。
実は、私もこの『S&B CRAFT STYLE スパイスカレー』を、作って食べてみたんです。そうしたらとてもおいしくできて、次の日も食べようと思っていたのに、家族に全部食べられてしまいました(笑)。私はこのカレーが、家で作るカレーの“最上級”なのではないかと感じました。それくらい、好きですね。


改めて、おふたりにとって「クラフト=手作りすること」の本質的な魅力とはなんでしょう?
要はそれぞれのスパイスの香りを嗅いで、「自分はこの香りが好きだから、これを多めに入れるんだ!」でいい。極論をいえば、「こんな組合せをしてはダメ」といったルールなんて、一切ない。自分の手を動かし、自分だけの正解を探す旅が自由にできる。それこそがスパイスカレーの、そしてクラフトのおもしろさだと思います。
そう考えるとクラフトってある意味、「宇宙の神秘に近づける作業」でもあると思うんです。カレーを作ったり、コーラを作ることで、生き物の根源に迫れる。だからこそ、やめられないのかもしれません。
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お話を聞いた人
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東京カリ〜番長 リーダー
伊東 盛さん広いジャンルのカレーを提案する出張料理人集団「東京カリ~番長」のリーダーとして、「二度と同じカレーは作らない!」を合言葉に、全国各地イベントなどでオリジナルカレーを提供。雑誌やウェブ等でのレシピ紹介や様々なジャンルの飲食店でメニューの開発や監修なども行う。目の前でカレーを作る「ライブクッキング」が得意。スパイスカレーの作り方を伝授する「カレーの教室」の講師も務める。
カレーの計画 -
「伊良(いよし)コーラ」代表
コーラ小林さん1989年・東京生まれ。北海道大学農学部卒業。卒業後、大手広告代理店に勤めながら、休日に青山ファーマーズマーケットでクラフトコーラの販売をスタート。28歳で会社を退社し、「伊良(いよし)コーラ」を創業する。東京・下落合に工房兼本店を構えるほか、東京・渋谷キャットストリートに路面店も。今後、NYにも出店予定。
iyoshicola.com
- Photo: Ryo Tsuchida
- Interview&Text: Akihiro Tajima

お話に登場したカレー

お話に登場したコーラ
