Interview Vol.1
エリックサウス総料理長
稲田俊輔さん
Syunsuke Inada

スパイスは超優秀な“脇役”である

スパイス料理に精通する方々から、スパイスの楽しさを学ぶ本企画。今回登場するのは、本格的な南インド料理を気軽に楽しめる専門店『エリックサウス』の総料理長・稲田俊輔さんです。『S&B CRAFT CURRY 中辛』を用いたアレンジレシピ、スパイス初心者におすすめの調理法に加え、稲田さんのスパイスへの想いやこだわりを伺いました。

スパイスは“料理の世界”の
解像度を上げてくれた

稲田俊輔さん

稲田さんが営む『エリックサウス』は、南インドのカレーやミールス(南インドの定食)に特化しています。スパイスをふんだんに使った料理を選んだ理由を教えてください。

初めてミールスに出会ったとき、今まで食べてきたどの料理とも違って“わけがわからない”という感覚だったんです。なんだかおいしい気がするけれど、なぜなのか理解できなくて。

いろいろな店で食べてみたり、南インドを訪れたりするなかで、ようやく自分なりに理解できたときの感動は、今までに感じたことのないものでした。その感動や発見を他の人と共有したい。その気持ちが『エリックサウス』のすべてですね。

今までにない感動とは、一体どのようなものだったのでしょうか?

スパイスを学び始めた頃は「魔法のようなもの」だと思っていました。それが徐々に「スパイスはどこまでいっても“脇役”」だとわかってきたんです。スパイスが脇役であるなら、こだわるべきは食材や調理法。いままで「単調でつまらない」と思っていたところこそが大事なのだと、“料理の世界”の解像度が上がったような感覚でした。

スパイスって謙虚に知ろうとし続けると、これまで謎だと思っていた点がパアッと星座のようにつながる瞬間があるんですよね。「こういうことだったのか!」と自分のなかで道筋が見えていくおもしろさが、スパイスに向き合っていく醍醐味だと思っています。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の魅力

『S&B CRAFT CURRY 中辛』を眺める稲田俊輔さん

“既製品らしくない”のがうれしい
具材や工夫で変化が楽しめる自由なカレールウ

――『S&B CRAFT CURRY 中辛』の第一印象を教えてください。

ちょっと妙な言い方になるかもしれませんが、“既製品らしくない”と言いますか……“カレールウっぽくない”んですよね。普通は袋を開けた瞬間にルウらしい香りがするんですけど、『S&B CRAFT CURRY 中辛』は先にスパイスの香りがやってきた。

ガラムマサラを調合したときのような香りで、今までとは違う商品だと感じました。最初に味を確認するためにシンプルなカレーを作ってみて、「ああ、これはいい」と。

――どんなところが良かったのでしょう?

一般的なカレールウにはコクや旨味が凝縮されていて、味が安定する良さがありますが、僕としては少しアレンジしづらい印象があって。あまりにカレールウの味が強く決まりすぎると、どんな素材を使ってどう調理してもその味になってしまうんです。

一方、『S&B CRAFT CURRY 中辛』は味の根幹はしっかりとしていますが、それ以外の部分はとてもシンプル。安心感もありながら、具材や調理の工夫次第で変化がつけられます。カレーやスパイスが好きな人ほど楽しめる商品だと思いますね。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の“本場感”はこう活かす。
稲田さん考案のアレンジレシピ

カレーを調理する稲田俊輔さん

アレンジレシピでは、「ブロッコリーのサグチキンカレー」と「コフタカレー(肉団子カレー)」の2品を作っていただきました! まずは、「ブロッコリーのサグチキンカレー」について教えてください。

ほうれん草のイメージが強い「サグカレー」ですが、実はインドではアブラナ科の青菜で作ります。今回は同じアブラナ科であるブロッコリーをたっぷり使いました。旨味のためにチキンを入れますが、菜食中心のインドらしいカレーです。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』のシンプルな味なら、野菜の繊細なおいしさが活かせると思い選びました。冬はカブや白菜に置き換えて作ってもおいしいですよ。

調理において気を付けるポイントはありますか?

水分量が大事ですね。レシピの水分量が少なくて不安になるかもしれませんが、焦げ付かなければ水分は少ないほうがいい。最初に入れる水は、ブロッコリーや鶏肉から水分を引き出すための呼水のような役割なので、最後は蒸発させるくらいでOKです。後から水を足すことはできますから、迷ったら水分はできるだけ少なめで!

あと、ペースト状のカレーと言っても、ヘラでつぶせる範囲で大丈夫です。食感が少し残っていてもおいしいですよ。ブロッコリーを潰すときに、鶏肉も一緒にほぐしてください。

「コフタカレー(肉団子カレー)」を選んだ理由も教えてください。

もう一品は、あまり日本で馴染みのない肉団子のカレーにしました。僕が中学生男子だったら喜んで食べるだろうな、という “わんぱくな気分”になるカレー です。

「コフタカレー」は、インドでは貴族が食べるような贅沢なカレー。日本では安いイメージのあるひき肉ですが、インドでひき肉は赤身肉を使う高級品。合いびき肉を買うときも、できるだけ脂身の少ないものを選ぶとより本格的です。もし機会があれば、マトンやラムで作ってみると本場の味わいになります。

「コフタカレー」肉団子を焼く工程

レシピのポイントは、どのようなところですか?

肉団子に『S&B CRAFT CURRY 中辛』を練り込んでいるところですね。ルウの中に小麦粉が入っているので、つなぎにもなります。スパイスと香味野菜、塩だけで味付けするときは練り込む必要がありますが、このレシピではある程度混ぜるだけでOK。ざっくりと混ぜる感じが、インドっぽくていいと思いますよ。

味付けは『S&B CRAFT CURRY 中辛』だけで十分カバーできます。青い香りだけが唯一入っていないので、今回はパクチーを追加。シシトウなどお好みの香味野菜も合いますよ。

いつものチキンカレーを“フライパン調理”で試してみて

カレーを調理する稲田俊輔さん

スパイス料理に憧れがありつつも、ハードルの高さを感じている人も多いと思います。そういう方々に向けて、アドバイスをお願いします。

スパイスは基本の使い方が大体は決まっています。長い食文化のなかで積み上げられてきたもので、それぞれちゃんと使いどころに理由がある。1冊でもいいからスパイスに関する本を読んだりして、1つひとつ丁寧に学んでいくことをおすすめしたいです。背景がわかると「だから、ここで使うんだ!」と納得感が増して、とてもおもしろいですよ。

そして、先ほどお伝えしたとおり、スパイスはあくまで素材を引き立てるための超優秀な脇役。極端な話をすれば、おいしい料理はスパイスを全部抜いてもおいしいんです。食材の扱いや調理の基本ができていればスパイスを使わずとも料理はおいしくなるので、あまり気負わなくて大丈夫ですよ。

初心者の方がトライするのにおすすめのスパイス料理はありますか?

シンプルなチキンカレーから始めるのがいいと思います。その際、深いお鍋ではなく、お家にあるフライパンで挑戦してみてください。

カレーといえば、鍋でじっくりコトコトというイメージがあると思いますが、インドカレーは煮込み料理ではなく「炒め物の延長」ぐらいの感覚なんです。フライパンでガーっと勢いよく、短時間でギュッと旨味を閉じ込めるような感じです。

インドではカレーは時間をかけて煮込むものではないんですね。

そうなんです。カレーのメインは“ソース部分”と思われがちですが、あくまでもメインは肉や野菜。ソースは食材を調理したときに染み出る“副産物”と認識したほうが、より本質的なカレーができると思います。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使えば、2種類のカレーを同時に調理することも簡単。複数のカレーを楽しむ食卓を、ぜひ体験してほしいです!


写真:三村健二
取材執筆:ウィルソン麻菜

プロフィール

エリックサウス総料理長 
稲田俊輔さん

料理人・飲食店プロデューサー。飲料メーカー勤務を経て、食のプロデュース会社「円相フードサービス」の設立に参加。南インド料理店「エリックサウス」全店のレシピ開発やメニュー監修を中心とした店舗プロデュースをおこなう。食やスパイスについての書籍多数。

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