町中華とは、愛され続ける古き良き昭和の味わい

古くから地域に愛され続ける、中華料理中心の大衆食堂。それらを総称して「町中華」と呼ぶ。本格的な中華ではなく、千円以下で満腹になれるボリューム満点のラーメンやチャーハン、餃子。店によっては丼もの、洋食なども。扱うメニューは店主の裁量に委ねられる。そのゆるさもまた、町中華が愛される理由のひとつである。

あんかけ野菜炒めの名店「水新菜館」

あんかけ野菜炒めの名店「水新菜館」店内

明治30年創業 浅草橋の老舗町中華

昼時には行列ができる、浅草橋の人気店。料理のクオリティや種類の豊富さの加え、店主の気さくでユーモラスな人柄も多くのリピーターを生む理由となっている。

あんかけ野菜炒めの名店「水新菜館」のご主人

あんかけ野菜炒めの名店「水新菜館」のご主人に町中華 あんかけ野菜炒めの素を試してもらいました!

町中華探検隊 下関マグロが取材!

※現在の商品名は「町中華 五目うま煮の素」です。

町中華の花形メニューと言えば、「あんかけ」料理ではないでしょうか。中華丼やあんかけ焼きそばなどのあんかけメニューは根強い人気があります。
あんかけといえば、なんといってもこちらのお店でしょう。浅草橋の「水新菜館」さんです。

JR浅草橋駅から江戸通りを北へ歩くと、赤地に白抜きで「水新菜館」と書かれている大きな看板が見えてきます。浅草橋のランドマークともいえるこちらのお店、ランチ時はずっと行列が絶えません。普通、行列ができるお店でも、13時を超えると少しは落ち着いてきますが、こちらのお店は14時をまわっても行列ができています。
私も最初訪れた時からずっと行列に並んでいますが、不思議なことに苦にならないのです。それは、店主の寺田規行さんや奥様の淑子さんがちょくちょく外に出てきて、「もうすぐですよぉ」なんて声をかけてくれるのです。
水新菜館さんの顔ともいえる寺田規行(てらだ・のりゆき)さんは、独特の風貌です。

こちらが寺田さん。(接客時はマスクをしていらっしゃいますが撮影時にはずしていただきました)蝶ネクタイにエプロン、イタリアンカラーのサスペンダーも印象的です。なにより、笑顔が素敵ですね。

水新菜館で最初にいただいたのがあんかけ焼きそばでした。こちらのお店でも人気のメニューです。そして、あんかけのおいしさに気づいて、次にいただいたのが「うま煮定食」でした。

こちらがうま煮定食 1040円(税込)。ごはん、ザーサイ、スープがついてきます。 見た目も美しく、まさに町中華の宝石箱といえるでしょう。食べるのが楽しくなるメニューですね。ちなみに味付けなどはあんかけ焼きそばと同じだそうですが、うま煮にはしいたけ、あんかけ焼きそばにはきくらげが使われていて、違いはそれだけだとのこと。 厨房を見ていると、うま煮は中華鍋であっという間に作られます。たぶん、家庭ではなかなかできない味ではないでしょうか。

こちらのお店の創業は明治30年。現在の店主、寺田規行さんの曽祖父、寺田新次郎さんという方が創業しました。最初は果物屋さんだったそうです。昔、果物のことを「水菓子」と呼んでいて、水菓子を売る新次郎さんのお店ということで、最初は「水新」という店名でした。当時、お店は道の向かい側、いま、みずほ銀行があるあたりにあったそうですが、関東大震災後の区画整理で今の場所に移ったそうです。
戦後は、飲食もやっていて、フルーツパーラーとなり、あんみつ、焼きそば、ラーメンなども出していたそうです。

本格的に中華料理にシフトしたのは現在の店主、寺田規行さんの代になってからで、店名も「菜館」をつけて「水新菜館」となりました。それが1974(昭和49)年のことです。当初は厨房で中華鍋を振っていたという寺田さん、人気のあんかけ焼きそばやうま煮は当時からメニューにあったそうです。
そんな「水新菜館」さんのあんかけを再現した「あんかけ野菜炒めの素」がエスビー食品さんから発売されました。

ご店主直伝!家庭でできるあんかけ野菜炒めのコツ

今回は「水新菜館」のあんかけを再現した「町中華 あんかけ野菜炒めの素」をお店の方に作っていただくことといたしました。
そこで、あんかけの極意について寺田さんにうかがってみました。
「まずは、野菜の切り方を工夫してください」とのこと。どういうことなのでしょうか?

ポイントは野菜の切り方

「町中華 あんかけ野菜炒め」のパッケージの説明によると、材料は豚バラ肉100g。お好みの野菜200gとなっています。 野菜はなんでもいいようですが、おすすめとして、白菜1.5枚、にんじん1/5本、しいたけ2個となっています。

台湾もやし炒め2人分の材料

※あんかけ野菜炒めの素:取材当時のパッケージ・商品名です。

あんかけ野菜炒め(2人前)の材料

あんかけ野菜炒め(2人前)の材料
町中華 あんかけ野菜炒めの素 1回分
豚バラ肉 100g
お好みの野菜 200g
水 3/4カップ
ごま油 大さじ1

気が付けば寺田さんが野菜を切ってくれています。あんかけ野菜炒めを作るときの野菜の切り方のコツは何でしょうか。

寺田さん: 野菜はただ切るんじゃなくて、同じ時間で火が通るように工夫して切るといいですね。

見ていると、白菜としいたけはそぎ切り、にんじんは薄めの短冊切りになっていますね。

寺田さん: 野菜のシャキシャキ感を残しながら火が通っているというのがベストなのですが、これはもう工夫しながらいい切り方を探してみてください。

ちなみに野菜を切った後は豚バラ肉を4㎝幅に切り始めた寺田さん。野菜を切ったまな板や包丁とは別のものを使っていらっしゃいました。
すべての具材を切ってから調理を始めます。

秘訣その1

野菜は同じ時間で火が通るように工夫して切る。

フライパンを温める

それでは、エスビー食品の「町中華 あんかけ野菜炒めの素」を使って料理をしていただきましょう。
調理してくださるのは、チーフの若目田耕太郎(わかめだ・こうたろう)さんです。

それまでいろいろな飲食店で働いたというチーフの若目田さん。水新菜館で働き始めて22年になるそうです。
老舗の町中華では店主のことをマスター、厨房の責任者のことをチーフと呼ぶところが多いようです。つまりこちらのお店ではマスターが寺田さん、チーフが若目田さんです。

若目田さん: まずはフライパンを温めます。手のひらをかざしてあたたかくなったらOKです。

家庭で私たちが調理する場合とプロの違いは、まずはフライパンを温めるという工程があることです。パッケージにもフライパンにごま油を入れてから火をつけるとありますが、プロは油を入れる前にフライパンを温めます。
油を入れる前にフライパンを温める理由は大きく2つあって、ひとつは肉などをくっつきにくくするというもの。もうひとつは具材を入れたときにフライパンの温度が一気に下がるのを防ぐというものです。 テフロン加工のフライパンの場合、ひとつめの肉がくっつきにくくなるというのは温めなくても問題ありませんが、ふたつめの温度が下がるのを防ぐということでは、テフロン加工のフライパンも温めたほうがいいかもしれません。
ただ、工夫次第では弱火で少し長めに炒めるという方法も有効ですので、ご家庭の調理器具で一番いい方法で調理をしてください。

秘訣その2

油を引く前にフライパンを温めると、焦付きや材料を入れた時フライパンの温度が下がるのを防げる。

フライパンにごま油大さじ1を入れて豚バラ肉を炒めていきます。
炒めるときの火はずっと中火にしておきます。

よく混ぜながら中火で炒める

若目田さんによれば、お店のあんかけ料理の場合、お肉はあらかじめ油通しをしてあるものを使うため、ほかの具材といっしょに炒めるそうですが、「町中華 あんかけ野菜炒め」はまず最初にお肉を炒めます。

豚バラ肉に火が通ったら野菜を入れて中火で炒めます。トータルで3分炒めます。肉を炒めた後はすべての野菜を一気に入れて炒めていきます。

見事なフライパンさばきの若目田さん。うまくフライパンをあおって、具材全体に火を均等に通していきます。一般の家庭では菜箸でよく混ぜればいいそうです。
お肉と野菜でトータル3分炒めたら、3/4カップ(150ml)の水を入れます。

水を入れたら蓋をして、中火で2分ほど加熱します。

若目田さん: 水分や火の通り具合を調節する為に、蓋はとっても大切です。必ずしてくださいね。

秘訣その3

材料をすべて入れたら、必ず蓋をして加熱せよ。

いったん火を止め調味料を投入!

火を止めて「町中華 あんかけ野菜炒めの素」を投入します。

「町中華 あんかけ野菜炒めの素」を入れたら、よくかき混ぜます。よく混ぜたら、再び火をつけます。

最後の30秒でとろみがつく!

あらためて若目田さんの中火について見てみましょう。

火がフライパンの下につくくらいの火加減です。若目田さん、慣れない調理器具に奮闘しています。

お皿に盛り付ければできあがりです。

いい香りが漂ってきます。とてもおいしそうですよ。

寺田さんが料理を取り分けてくれました。

出来上がりを確かめましょう!

さっそくお二人に食べていただきました。

若目田さん: 最後にもう少し火を入れてとろみを出してもよかったかも。

職人らしい厳しい目で試食していらっしゃいます。

寺田さん: これぐらいとろみがつけば合格点ですよ、おいしくできています。

どれどれ、私もいただいてみましょうか。

うわぁ、お店の味にかなり近いですね。驚きました。
こんなに簡単にうま煮の味が再現できるとは、正直驚きましたよ。
みなさんも、ぜひお試しあれ!

ライター / 町中華探検隊 副隊長
下関マグロ(しものせき・まぐろ)

1958年、山口県下関市生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社勤務を経てフリーに。北尾トロ、竜超と共著で『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(角川文庫)。CSテレ朝チャンネル『ぶらぶら町中華』にトロと出演中。

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