自由に、柔軟に。日本の家庭に合うスパイスの使い方がある
スパイス料理に精通する方々から、スパイスの楽しさを学ぶ本企画。今回はスパイス料理教室『Spice Life』を主宰し、スパイス料理研究家として多方面で活躍する一条もんこさん。『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使った手軽なアレンジレシピと共に、スパイスが身近に感じられるコツを教えていただきます。
スパイスで「いつもの料理」がガラッと変わる
もんこさんがスパイス料理を作るようになったきっかけを教えてください。
幼い頃から料理が好きで、小学生の頃からよく作っていましたが、スパイス料理を作るようになったのは大学進学を機にひとり暮らしを始めてからですね。スパイスからカレーを作るようになったのが始まりで、だんだんとスパイス自体に目を向けるようになりました。
スパイスは味というより香りを楽しむもの。いつもの食べ慣れた料理にかけるだけでガラッと印象が変わるんですよ。当時はごはんやサラダ、一品料理、何にでもスパイスを入れて、ありとあらゆる可能性を試していました。
年間のカレー実食数は800食、オリジナルのスパイスレシピは1500品以上と伺いました。もんこさんをそこまで惹き付ける「スパイスの魅力」とはなんでしょうか?
スパイスはこう組み合わせるべし、という「正解がない」ことに魅力を感じているんだと思います。スパイスそれぞれが持つ香りや辛味をどう生かすのか、それは作る人によっても個性が出ますし、同じ人が作っても日によって変わることもあります。
スパイスの組み合わせや量、使い方次第で、1つの料理がいろいろな形に変わっていく。スパイスを知れば「誰が食べるのか」「どういう気分なのか」などによって、自由自在に料理をアレンジできるんです。
『S&B CRAFT CURRY 中辛』の魅力
いつものカレーを作る感覚で
本格スパイスカレーが楽しめる
――『S&B CRAFT CURRY 中辛』を実際に使ってみて、どのような印象を持ちましたか?
パウダールウならではの手軽さと本格的なスパイスの香り、どちらの良さも持つ画期的な商品ですよね。焙煎したホールスパイスに炒め玉ねぎ、煮込み用のパウダースパイスと、スパイスカレーを作る際に必要な材料や工程がしっかり組み込まれていて本格的。それなのに、パウダールウだからサッと溶けて使いやすい。
いつものカレーを作る感覚で満足度の高いスパイスカレーを作れちゃうのが大きな魅力だと思いました。辛すぎず甘すぎず、ちょうどいいバランスなので、お子さんのいるご家庭でも作りやすいのではないでしょうか。
――『S&B CRAFT CURRY 中辛』をきっかけとしたスパイスの楽しみ方、深め方はありますか?
私はカレーを中心としたスパイス料理教室を主宰していますが、生徒さんからよく聞くのが「スパイス料理を作ってみたいけど何をどう使っていいかわからない」という声なんです。また、せっかくスパイス料理に興味を持っても、最初に思った通りに作れず「スパイスは難しい」と苦手意識を持ってしまった方もいます。
『S&B CRAFT CURRY 中辛』はそうした方のイメージを変えてくれる商品なのではと思いました。まずは一度そのままアレンジせずに作ってから、「もう少し辛味がほしいな」「香りをプラスしたいな」と、お好みに合わせてスパイスを加えてステップアップしてみるといいかもしれません。
何より『S&B CRAFT CURRY 中辛』で味の土台がしっかりできているので、冒険しやすいですし。ぜひご自身ならではのカスタマイズを楽しんでいただきたいです。
『S&B CRAFT CURRY 中辛』の芳醇な香りを活かす。
もんこさん考案のアレンジレシピ
今回は『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使ったアレンジレシピを2品教えていただきました。どのような発想からレシピを考えられたのか教えてください。
『S&B CRAFT CURRY 中辛』の使いやすさを生かして、スパイス料理初心者の方でも「作ってみようかな」と思ってもらえるようなレシピにしました。いずれもスーパーで手に入る身近な材料ですし、煮込みも短時間です。
スパイスカレーは作ってすぐ食べるのが、一番香りが立っておいしいんです。「時間がないけど、本格的でおいしいものが食べたい」というときに、作ってみてほしいですね。
どちらもあっという間に完成して驚きました! 1品目の「和風スープカレー」について、もんこさんが特に工夫した点はありますか?
「スープカレー」はお店でしか食べられないと思っている方も多いと思いますが、『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使うと味がパッと決まるので簡単に作れるんですよ。
“スープを楽しむカレー”として工夫したのは大まかに3つ。
1つ目は和風だしとコンソメスープを両方使うこと。旨みの相乗効果を狙っています。2つ目は梅干しを加えること。スープカレーは食べている間に何となく単調に感じてしまうこともありますが、梅干しを足すことで味わいに奥行きが出るんです。
3つ目は、プラスアルファとしてスパイスやハーブを加えること。今回はクミンやクローブなどのスパイスや、パセリ、バジルといったハーブを使っていますが、どれもご家庭の戸棚の奥にありがちじゃないですか?(笑)。
例えば「家にあるのがコリアンダーだった」とか「ターメリックしかない」という場合でも、クミンやクローブの代わりとして加えてみてください。『S&B CRAFT CURRY 中辛』がベースになっているので、アレンジの幅が広がります。
「サバとトマトのカレー」はサバ特有の臭みがかなり和らいで、トマトの酸味が相まってさっぱりと食べられますね。こちらの工程もとても簡単ですが、作るうえでのポイントがあれば教えてください。
日本のカレーはお肉が定番ですが、南インドでは魚を使ったカレーがよく食べられているんです。缶詰なら魚の下処理も不要ですし、骨まで食べられて加熱時間もたったの3分。思い立ったときにすぐ作れるレシピなのではないかなと。
サバの臭みが緩和されているのは、臭み消しの効果を持つクミンのおかげですね。ブラックペッパーの爽やかな辛味も相まって、さっぱり食べられます。大人向けに作るのであればブラックペッパーをチリペッパーに変えてもいいですね。
ポイントは「具材を崩しすぎないこと」でしょうか。あまり混ぜすぎてしまうとサバがフレーク状になって、トマトも崩れてしまいます。食べごたえを出すためにも、調理中は優しく混ぜる程度にしてください。
本場の真似がすべてじゃない。
日本の家庭に合う
スパイスの使い方がある
もんこさんの視点から、スパイスカレーを手軽に楽しむためのアドバイスをいただきたいです。
まずは1種類「マイスパイス」を決めてみる。いきなり複数のスパイスを揃える必要はありません。いつもの料理にマイスパイスをちょっと足すことで特徴を掴めると思います。
繰り返しになりますが、スパイスは味ではなく“香り”なんです。小さじ半分程度であればそこまで味は変わりませんから、あまり気負いすぎずに使ってもらって大丈夫。
「1種類、小さじ半分」からなら、あまり慎重になりすぎず始められそうです。
あとはホールスパイスを油で炒めて香りを出す「テンパリング」という工程がハードルを上げているように感じます。「スパイスカレーを作ると苦くなる」とよく聞きますが、その理由のほとんどは「テンパリング」の工程で、スパイスを焦がしてしまっているからなんですね。
スパイスカレーの本場インドでは、たしかに「テンパリング」をするのが一般的ですが、それは普段の料理からたっぷりの油を使う文化があるから成立しています。一方、日本の一般家庭ではそもそも使う油の量が少ないので、火が入り過ぎてしまうんです。
本場の真似をすれば上手くいくかというと、そうではないんですね。日本の家庭に合ったスパイスの使い方があるはずで、それを生徒さんたちにお伝えするようにしています。
今回のレシピも玉ねぎを一緒に入れてテンパリングすることで、スパイスの加熱のしすぎを防いでいます。「スパイス料理って意外と簡単に作れるんだ!」と実感してもらえると思いますよ。
写真:三村健二
取材執筆:田窪 綾
プロフィール
スパイス料理研究家
一条もんこさん
小学生の頃から料理に親しみ、大学時代にスパイスの魅力に目覚める。料理研究家のアシスタントや、フレンチ、イタリアン、カレー店などで経験を積み独立。スパイス料理教室『Spice Life』や『カレー研究会』を主宰するほか、レシピや商品開発、メディア出演など多方面で活躍中。
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