Interview Vol.4
ゴスペラーズ
黒沢 薫さん
Kaoru Kurosawa

“正解がない”のは、スパイスも音楽も同じ

スパイス料理に精通する方々から、スパイスの楽しさを学ぶ本企画。今回はカレーとスパイスをこよなく愛する、ゴスペラーズの黒沢 薫さんにお話を伺いました。黒沢さんとスパイスの出会いを振り返るとともに、『S&B CRAFT CURRY 中辛』を用いたアレンジレシピもご紹介いただきます。

大学時代、スパイスは
憧れの存在だった

黒沢薫さん

黒沢さんとスパイスの出会いからお聞かせいただけますか?

小学生のうちから料理を作っていましたが、その頃は特にスパイスを意識していませんでした。カレーは市販の割り入れるタイプのルウを使い、具材や炒め方を変えたり、隠し味をいろいろ入れてみたりと工夫していましたね。中高生の頃は夕飯当番だったので、週に一度はカレーを作って実験していました。数々の失敗もありましたが、試行錯誤することは昔から好きでしたね。

スパイスとの出会いは、大学生のとき。通っていた大学近辺には、エスニック料理屋がたくさんあるんですよ。そこでいろいろなお店に入って、インドやタイなどの本格的でスパイシーなカレーにカルチャーショックを受けました。それまでは、いわゆる欧風カレーしか知らなかったですからね。

それで、ご自身でもスパイス料理を作り始めたのでしょうか。

当時は食べ歩いていただけで、作るようになったのはもう少し後になってから。その頃は今よりも手に入れるハードルが高かったので、スパイスは手の届かない憧れの存在でしたね。いろんなスパイス料理を食べ歩いては「このカレーには何のスパイスが使われているんだろう」と考えたり、「自分はクローブの香りが好きなんだな」と発見したりしてね。

スパイス料理作りに挑戦し始めたのは2002年頃。当時はまだスパイスをうまく使いこなせず、順番もタイミングもよくわかっていなかったなあ。思ったようにできなくて、最後にカレールウを足してなんとかカレーっぽくする……みたいなこともありました。でも、「スパイスを使ってるんだ!」という高揚感はありましたね。

今でも日本中のスパイス料理やカレーを食べ歩いているそうですね。

そうですね、本当に飽きません。おいしいものを食べたい気持ちと同時に、新しいカレーを前にすると「どんな味がするんだろう」って知的好奇心が沸いてきます。どうやって作っているんだろう、何のスパイスを組み合わせているんだろう、と考えるのが楽しいです。

作り始めた頃に比べたらスパイスがわかったような気になっているけれど、今もまだまだ試行錯誤中。スパイスの組み合わせ方や具材との相性、投入タイミング、火入れの時間などを変えるだけで、本当に味の奥行きが変わってくるので、すごくおもしろいですね。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の魅力

『S&B CRAFT CURRY 中辛』を手にとる黒沢薫さん

いいとこ取りでビシッと決まる
安心感と好奇心を満たすカレールウ

――『S&B CRAFT CURRY 中辛』の第一印象を教えてください。

カレールウだけどスパイスミックスのような香りが広がるユニークな商品だな、と思いましたね。味見をしてみたら、とにかく塩味がちょうどいい!

スパイスだけでカレーを作るときに一番難しいのが、塩味の加減なんです。そこでおいしくできなくて、挫折しちゃう人もいると思うんですね。でも、『S&B CRAFT CURRY 中辛』は、もうすでに塩味が決まっているので失敗しづらいし、後から自分で整える必要もありません。

あと、スパイスが豊かに香るのはもちろんですが、しっかりとコクもあります。欧風カレーみたいな濃厚さとインドカレーのような尖った感じ、両方のいいとこ取り。「こういうものが食べたかった!」と思いました。

――実際に『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使ってみて、いかがでしたか?

ホールスパイスが焙煎してあるので、定番カレーの安心感もありながら、「スパイス料理を作っているんだ!」という好奇心も満たしてくれるのがうれしいですね。

スパイスをテンパリングするのはおもしろいのと同時に、初心者にとってハードルが高いところでもあります。このカレールウは、ただ加えるだけで手間暇かけた味になる。“入門編”としてぴったりだと思います。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の“手軽さ”はこう活かす
黒沢さん考案のアレンジレシピ

調理する黒沢薫さん

アレンジレシピでは、「スパイシーエビチリ」と「ビネガーポークカレー」の2品を作っていただきました! まずは、「スパイシーエビチリ」について教えてください。

豊富なスパイスを馴染みのある料理に加えてみたいと思い、エビチリ風にしてみました。実際、インドには「インディアンチャイニーズ」という中華をインド風に仕上げた料理があるんです。今回は、エビチリに使われる豆板醤を『S&B CRAFT CURRY 中辛』に置き換える、手軽なレシピにしました。

ごま油とスパイスの香ばしさの相性がとてもよくて、お互いに引き立て合う組み合わせです。焙煎スパイスが香ばしいため、中華料理といってもそこまで強火にこだわる必要はありません。あっという間にできてしまうので、食卓にもう一品!というときに作ってみてほしいですね。

「ビネガーポークカレー」のこだわりもお聞かせください。

インドのゴア地方発祥の「ポークビンダルー」というお酢を使った甘酸っぱいカレーをイメージしました。爽やかな酸味で暑い日に食べたくなるカレーです。ごろっと大きな豚肉が入ってご馳走感もあるので、休みの日や特別なときにぜひ作ってほしい一品です。

ポイントは、焼く前の豚肉に『S&B CRAFT CURRY 中辛』を絡ませておくこと。マリネして下味がついたものを油で焼くことで、焙煎されたスパイスの香ばしさをさらに引き立てることができます。

一般的には、甘みと香ばしさを出すために玉ねぎを飴色まで炒めることが多いのですが、『S&B CRAFT CURRY 中辛』には飴色玉ねぎが含まれているため、その工程は不要。深みをカバーしてくれる本格的なカレールウだからこそできる時短方法です。

“自分の正解”を見つける
おもしろさを感じてほしい

キッチンで調理する黒沢薫さん

黒沢さんはスパイス料理のどのようなところにおもしろさを感じますか?

スパイスって正解がないんですよね。一般的には炒めすぎてはダメだと言われていても、インドで現地の人に聞くと「いや、これは焦がしていいんだ」と言われたりするんです。「えっ?どっち?」みたいな(笑)。最終的には自分なりの正解を見つけるしかないんだと思っています。

僕も含めてミュージシャンにカレー好きが多いのは、そういうところにおもしろさを感じているからなんじゃないかな。とことん仕込みにこだわりながら、最終的には自分がいいと思ったものを出すしかない。まさに“クラフト *”の作業で、音楽作りにとても似ていると思います。

自分なりの「おいしい」を形にしてみて、人に食べてもらって、また試行錯誤して。それをずっと繰り返している気がします。

* *クラフト(craft)=手作りの意

音楽とスパイスに、そんな共通点があったんですね。

食べる側に関しても、音楽批評に近いと思っています。マニアックな人には自分なりの評価軸があると思うんです。定番が好きな人もいれば、どんどん新しいものが食べたい人もいる。ルーツとなる名盤的なものがありつつ、自分がいいなと思ったものを取り入れていくところが音楽と似ていますよね。

「カレーは音楽で、音楽はカレーだ」と言うと、みんなに「よくわからないな」という顔をされてしまうけど(笑)。僕はすごく音楽っぽくカレーやスパイスに向き合っているんだと思います。

「もっと日常的にスパイスを取り入れてみたい」と思う方々に向けて、アドバイスをお願いします。

お世辞ではなく、『S&B CRAFT CURRY 中辛』から始めてみるのがいいんじゃないでしょうか。かなりしっかりとスパイスが入っているので、「自分がどんなスパイスが好きなのか」がわかると思います。“自分なりの正解”を探す旅の、最初のきっかけになってくれるはずです。

ホールスパイスの粒感が好きだと思ったら、最初はクミンを加えてみることをおすすめしたいですね。具材を入れる前の油でクミンを炒めるだけで、印象が大きく変わるんですよ。うまくテンパリングできるとナッツみたいな香りがして、少しの手間で味わいの変化を感じられると思います。

僕はフェンネルやマスタードシード、お肉系ならクローブも好きです。ぜひ好きなスパイスを使って、失敗を恐れずいろいろ試行錯誤してみてください。


写真:三村健二
取材執筆:ウィルソン麻菜

プロフィール

ゴスペラーズ 
黒沢 薫さん

ヴォーカルグループ「ゴスペラーズ」のメンバーとして1994年にメジャーデビュー。アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ幅広く活動し、2005年にはソロ活動もスタート。全国を駆け巡るカレーマニアとしても有名で、自身のレシピも豊富。

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