Interview Vol.3
SPiCE Cafe店主
伊藤一城さん
Kazushiro Ito

スパイス料理の醍醐味は“味のグラデーション”にある

スパイス料理に精通する方々から、スパイスの楽しさを学ぶ本企画。今回お話を伺ったのは、東京都墨田区にある人気スパイス料理店『SPiCE Cafe』店主・伊藤一城さんです。世界一周の旅を機に「スパイスのおもしろさを日本に広めたい」という想いでお店を開いた伊藤さんに、スパイスの魅力や料理への想いをお聞きしました。

世界一周の旅で知った
スパイスの魅力

伊藤一城さん

20代のときに3年半かけて世界48か国を巡ったそうですね。旅の中で、どのようなスパイスとの出会いがありましたか?

渡航するまでは「スパイス=カレー」のイメージを持っていましたが、アジア各国、中近東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸といろんな国を旅する中で、スパイスは世界中で多様な使われ方をされていると知りました。

例えば、スリランカでは数種類のカレーやおかずをセットにした定食スタイルのプレートが一般的ですが、「このおかずにはクミンを使っているから、こっちの風味づけはコリアンダーにしよう」など、トータルバランスを考えてスパイスを使っているんですね。

なるほど。日本でも、おかずが全部醤油味にならないよう、塩味の一品を加えるような感覚に似ていますね。

そうですね。日本でいう醤油やみりん、わさびといった調味料を使う感覚でスパイスを使っている国が多かったです。「スパイスってこんなにいろいろな楽しみ方があるんだ」と可能性を感じました。

また、ロシアや中央アジアなどではスープに少量のクミンシードを足していたり、イングランドではコーヒーにカルダモンを入れたり、スパイスが普段の暮らしに溶け込んでいることに驚きましたね。

カレーだけではないスパイスの楽しみ方を日本に広めたいと、帰国後に『SPiCE Cafe』をオープン。ランチはカレーがメインですが、ディナーでは四季折々の食材を使ったスパイス料理をコース仕立てでお出ししています。インドには四季がないので、日本ならではの楽しみ方なのではないかと。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の魅力

『S&B CRAFT CURRY 中辛』を手にとる伊藤一城さん

豊かな焙煎香が印象的。
“味のグラデーション”を楽しんで

――『S&B CRAFT CURRY 中辛』の第一印象を教えてください。

スパイスの焙煎香と立体的な風味がすごくいいですね。ホールと粗挽きが使われていて、特にホールスパイスを噛んだときの食感と香りの広がりが印象的です。ひと口食べるごとに変化が出る「味のグラデーション」を感じました。

僕もスパイス料理を作る上で「味のグラデーション」を演出することを大切にしているんです。ひと口目のおいしさだけではなく、口の中でどう香りを展開させていくか。

例えば、最初に食べたときにマスタードシード、中盤でコリアンダーを感じて、最後に鼻から抜ける香りはカルダモンといったように、時差で香りを感じられて交響曲のように広がっていくイメージです。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の味わいは、そんな「スパイスの立体的な香りを楽しんでほしい」という僕の想いと通じるものがあります。

――これ1つでスパイスのいろんな香りを楽しめると、贅沢感が増しますね!

まさに、手間をかけずともワンランク上のおいしさが実現できる商品だと思います。『S&B CRAFT CURRY 中辛』には、スパイスの風味を活かす焙煎スパイスや炒め玉ねぎなどの旨みも含まれていますから、基本的な作り方でも満足感の高いカレーが楽しめるのではないでしょうか。

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の“焙煎香”を活かす
伊藤さん考案のアレンジレシピ

調理する伊藤一城さん

今回は『S&B CRAFT CURRY 中辛』を使ったアレンジレシピを2品教えていただきました。どのような発想からレシピを考えられたのでしょうか?

『S&B CRAFT CURRY 中辛』の特徴である、スパイス感を主役にした料理を作ろうと考えました。そのためには絞り込んだ材料で、できるだけシンプルな方がいいだろうと。いろいろ試した中で選んだのが今回の2品です。

鶏ひき肉を炒めるシーン

1品目「チキンキーマカレー」では、牛や豚のひき肉ではなく、なぜ鶏ひき肉を選んだのでしょうか。

牛や豚でもおいしく作れますが、鶏肉は他のお肉よりもあっさりしている分、スパイスの香りがより際立ちます。実際にインドでも鶏肉を使うことが多いんですよ。

ポイントは、炒める油にしっかり唐辛子の香りを移すことと、玉ねぎを軽く焦がすように炒めて旨みを引き出すこと。フライパンだけで完結できるので、時間がないときでも手軽に作れます。

香菜、しょうが、赤玉ねぎというトッピングが加わると彩りも華やかですね。

この3種類は、インドでもカレーとよく合わせる食材なんです。特に赤玉ねぎはスパイス料理とすごく相性がいい。さらにしょうがと香草を加えることで、ひと口食べるごとに味や食感が変わり、グラデーションが感じられます。

トッピングを揃えるのが難しければ、レモンを添えてもいいですね。途中でカレーにかけると味に変化が生まれると思います。

2品目「スパイススペアリブ」についても教えてください。

スペアリブはうちのお店のディナーでも出しているメニューです。10種類程度の焙煎スパイスを使って味付けしているのですが、そのスパイスの種類が『S&B CRAFT CURRY 中辛』と共通する部分が多かったんですよね。

シンプルにこの1袋だけで作ってみたらすごくおいしかったので、これで行こうと。マリネ液にヨーグルトやはちみつを加えることで、味の層に厚みも出ます。

ポイントは「焼く前に余分なマリネ液をふき取ること」でしょうか。マリネ液を焦がすと苦みが出てしまうからです。その一方、お肉自体の焦げ目は旨みが出ますし、一部に焦げ目があることによって、先ほどお伝えした「味のグラデーション」を楽しんでいただけると思いますよ。

漬け込みさえしておけば、「あとは焼くだけ」という手軽さもいいですよね。伊藤さんは「スパイススペアリブ」をどんなときに作ってほしいですか?

休日など時間があるときにじっくり焼いてもらって、アツアツのスペアリブにガブッとかぶりついてもらうのが一番いいんじゃないでしょうか。お皿の横にフライドポテトを添えて、ビールと一緒に合わせたら最高じゃないですか?バーベキューやキャンプにもおすすめですよ。

スパイス料理×ワインは意外に合う。
おいしさがさらに広がるドリンクペアリング

インタビューに応える伊藤一城さん

最後に、ご家庭でスパイスカレーやスパイス料理をさらに楽しむためのアドバイスをいただけますか?

例えば、スパイスを効かせたカレーや料理にワインを合わせてみてはいかがでしょうか。 『SPiCE Cafe』のディナーではスパイス料理のコースをお出ししていますが、5~6年前からはナチュラルワインのペアリングやティーペアリングも始めたんです。

きっかけは10年ほど前に訪れたイギリス・ロンドン。当時イギリスではインド料理を西洋式にコース仕立てで楽しむ「ヌーベルインディアン」というジャンルが出てきた時期で、あるお店ではワインペアリングを取り入れていました。日本ではちょうどナチュラルワインが流行りだした頃で、僕もワインが好きでしたし、これはおもしろいなと。

スパイス料理とワイン、意外な組み合わせですね!

お店のソムリエの方に話を聞くと、「僕らも新しく始めた試みで経験が浅いから、勉強しながらやっているんだよ」と。日本ではまだ「スパイス×お酒のペアリング」をやっているお店はどこにもなかったので、また違ったスパイスの楽しみ方を広めたいと思い、ペアリングを始めたんです。

スパイス料理にはどのようなワインが合いますか?

相性の良さにびっくりしたのは、オレンジワインですね。 フレッシュな酸味と土っぽさを感じる風味がスパイスにすごく合うんですよ。

逆に合わせるのが難しいのは、長期間熟成したどっしりとしたワイン。スパイスと合わせると主張がぶつかって、それぞれの良さを打ち消しあってしまいます。

スパイスの魅力を存分に生かした『S&B CRAFT CURRY 中辛』を機に、「スパイス×ワイン」のおもしろさも感じてもらえたらうれしいです。


写真:三村健二
取材執筆:田窪 綾

プロフィール

SPiCE Cafe店主 
伊藤一城さん

スパイス料理店「SPiCE Cafe」店主。大学卒業後、空間デザインを手掛ける企業で4年間の会社員生活を送ったのち、26歳で世界一周の旅を機に、へ。3年半で48カ国を巡り、旅する中で特に興味をひかれたスパイスをテーマに自身で料理店を開くことを決意。帰国後にイタリア料理店、インド料理店、スリランカ料理店で経験を積み、2003年11月に「SPiCE Cafe」を開業。2021年には2号店として日本橋兜町にスリランカ料理店「HOPPERS」をオープン。

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