ハーブが香る 南欧の旅

2010年秋、ハーブのふるさと・南欧を訪れました。フランス・プロヴァンス地方に始まり、コルシカ島、コートダジュール、そしてイタリア・ジェノバへの旅路で出会った風景や料理をご紹介します。

2010/10/20~21

南仏グルメに舌鼓 ~ニース、エズ~

グラースを出て小1時間、ニースに到着するころには、すっかり日が傾いていました。

海岸沿いにある有名な「プロムナード・デザングレ」には、ジョギングしている人の姿も見えました。
日本語にすると、「イギリス人の遊歩道」という名前のこの道は、文字通り、19世紀に在住イギリス人の出資で造られたものです。ニースは冬でも温暖な気候だったことから貴族がこぞって訪れるようになり、現在も世界屈指のリゾートとして名を馳せていますが、マティスやシャガールといった芸術家たちとも縁が深く、また旧市街にはかつてイタリアの支配下だった頃の名残もあり、エキゾチックな魅力にあふれた街です。
南仏に来て5日目、美味しいとは言え、そろそろフランス料理以外のものも食べたくなってくるのが本音。でも、せっかくここまで来たからには、中華や日本食じゃないものがいいな・・・ということで、5日目のディナーはちょっと趣きを変えて、フランスでもポピュラーなメニューのひとつ・クスクスに決定!

ニースの街中にあるモロッコ料理レストラン「La Table du Maroc」に行きました。
お店に入った瞬間、ふわーーっとスパイシーな香りに包まれます!
内装も素敵な雰囲気★

北アフリカ料理を代表するメニューのひとつ・クスクスは、フランスでもよく食べられている料理。
フランスとモロッコの食文化は、歴史的・地理的な要因から互いに影響し合ってきました。モロッコ料理はスパイスやフレッシュハーブをたっぷり使ったものが多いそうですが、さてさて、どんなお味なんでしょう?

まず運ばれてきたのは、パスティーヤ
モロッコの伝統的な料理で、スパイスで風味づけした鶏肉や鳩肉を小麦粉で作った薄い皮で包んだお料理です。表面は粉砂糖が模様を描いていて面白い!
甘い味付け?!とびっくりしますが、食べてみるとほどよい甘さ。アーモンドも入っており、コリアンダーシードやシナモンで香り付けされていて、初めて食べるこの味わいはクセになりそう!

さ、いよいよ本日のメイン・クスクスの登場!

デュラム・セモリナで作られた粒状のクスクスは、世界最小のパスタと呼ばれています。スープをかけて食べるのが代表的な食べ方で、クスクスとスープの料理全体を指してクスクスと呼ぶこともあります。

こちらがスープ。シナモン、クミン、コリアンダーのほか、ラセラヌーが使われているんですって。
ラセラヌーとは、カルダモン、ナツメッグ、ロングペッパーなど様々なスパイスがブレンドされたミックススパイスで、モロッコ料理には欠かせない存在です。

お肉も運ばれてきました。ボリューム満点・・・ラムにソーセージにミートボール、とにかく盛りだくさん!!

かわいい器で添えられたハリッサ

クスクスを食べる時の辛みづけに使うのがハリッサ。唐辛子をベースににんにく、クミン、コリアンダーなどのスパイス、そしてオリーブ油を加えてペーストにしたもので、他の北アフリカ料理でも使われます。

これらは一体どうやって食べるんですか?!

「はいはい、こうやってね~」
クスクスやお肉を皿に取り、そこにスープの汁をかけます。お好みでハリッサを添えて・・・。

私はちょっとお上品なサイズに盛り付けてみました。
それでは早速いただきます♪

辛そうに見えたスープは、野菜の美味しさにあふれ、スパイシーだけど辛くありません。コリアンダーの葉の香りも印象的。クスクスは思いのほか食べ応えがありました。ハリッサでちょっと辛みを加えると、ますます食が進みます。

ふーっと一息ついたところで、最後のデザート。

「これは何ていうお菓子?」とそれぞれ尋ねてみたけど、「モロッコ伝統の味だから、とにかく食べろ」とのこと(笑)。三日月型をしているものが、「ガゼルの角」という名前の伝統的なお菓子だということだけは聞き取れました。モロッコのお菓子には、ゴマやオレンジフラワーウォーターをよく使うそうで、そのオレンジフラワーウォーターのせいか、どれも今まで食べたことのない独特の風味でした。

そして、モロッコといえば、忘れてはいけないのがミントティー

美しいモロッコグラスに注がれたミントティーは、かなりしっかりと甘みがついていました。

今日の食体験で、私の中では、「モロッコ料理=スパイス+ハーブ+砂糖」のイメージが出来上がりました。
また機会があったら他のモロッコ料理もいろいろ試してみたいな~。
こうしてスパイシーな香りあふれる異国情緒を楽しみ、好奇心を煽られつつ、ニース最初の夜は更けていきました。

ひと晩明けて、ニース2日目、そしてフランスで過ごす最後の1日となりました。

朝からいいお天気!ホテルからバスに乗って旧市街まで行き、途中から歩いて海岸に近いサレヤ広場のマルシェへ向かいます。旧市街は19世紀までイタリアの支配下にあった影響で、縦長の四角い窓に緑の扉といったイタリア風な建物が並んでいます。

マルシェに到着!9時過ぎにはすでにいろいろなお店が立ち並んでいました。

カシのマルシェに比べてかなり広く、色々なお店が立ち並び、活気にあふれています。

美味しそうな野菜に果物を見ていると、朝ごはんを食べたばかりでもお腹が空いてしまいそう!

この白いごろごろした根っこみたいなものは?!

これはフェンネルの株元。フェンネルは種子がスパイスとしてカレーの原料にも使われますが、株元の部分は野菜として食べられます。

カラフルに並ぶフルーツの砂糖漬けも南仏名菓のひとつ。

スパイス店にはホールからパウダーまで、数えきれないほどの種類が並んでいました。

食材から雑貨まで豊富にそろうニースのマルシェにいると時を忘れてしまいそう。

この後、少し離れた所にあるシャガール美術館を見学しました。
庭園にはラベンダーやローズマリーがたくさん植えられています。

きっと夏には満開のラベンダーがきれいに咲くんでしょうね。その時期にも訪れてみたいです。

ニースでマルシェ、シャガール美術館を見た後は、コートダジュールを代表する鷲の巣村のひとつ・エズへ。
南仏には「鷲の巣村」と呼ばれる、丘や岩山の上に民家が寄り添うように集まっている村が数多くあります。
その昔、アラブ人やトルコ人の攻撃から逃れるために見えない場所に村を造ったのが始まりで、村の中は細い道が迷路のように入り組んだ構造になっています。中世の佇まいを残す素晴らしい景観と美しさが多くの人を魅了し、かの哲学者ニーチェもエズで思索に耽ったと言います。

ニースのにぎやかな街中から、どんどん上の方へとバスで登っていくと、徐々にその姿が見えてきます。コートダジュールの海岸線から切り立つようにそびえるその断崖に、エズはあります。

さらに近付いていくと・・・

・・・集落が見えました・・・!

あの中にはいったいどんな世界が広がっているんでしょう?
急ぎたくなる気持ちを押さえつつ、まずはランチ。

近くのホテル「Les Terrasses d'Eze」のレストランで海やモナコへ続く道を眺めつつ、
レモン風味のチーズリゾットやマッシュルーム、
チキンのフリカッセ(クリーム煮)、
オレンジのシナモン風味サラダ
をいただきました。

リゾットはレモンの香りがさわやか!
いつもならあらびきのブラックペッパーを効かせたくなるチーズリゾットですが、ホワイトペッパーをほんのり効かせる程度にすると、 チーズとレモンのハーモニーが引き立つな~と思いました。

フリカッセには、ローズマリーがダイナミックに盛り付けられていてビックリ(笑)。
でもローズマリーはきのこにも鶏肉にも合うし、この組み合わせもお家で真似できそう♪

オレンジのデザートは、フリカッセのこってりした味わいの後に、さっぱりしたオレンジとふわっと香るシナモンが絶妙!

満腹で満足して、テラスに出てみると・・・白い花のローズマリーを発見!

品種によって白い花を咲かせるローズマリーがあることは知っていたものの、実物で見るのは初めてでした。
思わずカメラでパチリ。

しっかり食べた後、いよいよエズの村の中へ!頂上の熱帯植物庭園を目指して進みます。
細く曲がりくねった道は、ところどころでさらに細い道に分岐して、本当に迷路のよう。石畳の道は見た目以上に傾斜があり意外と大変でしたが、可愛らしくて素敵な景色にも癒されながら登っていきました。

頂上の熱帯植物園に入って登りきると・・・

うわ~、すごい眺め!晴れた日にはコルシカ島までも見えるというエズの頂上から見えるのは、まさに絶景。
青い海とはるかかなたに見える水平線、この美しい景色は、この海を行き来してきた人々、この断崖絶壁の地に村を造った人々を始め、自然と共に生きてきた人々のことにも思いを馳せずにはいられない、壮大な眺めでした。

南仏最後の締めくくりは、プロムナード・デザングレ近くにあるレストラン
「KOUDOU」(クードゥー)でディナー。
ホテルから歩いていく途中で、夕焼けの赤い色と、夜を迎える紺碧の空のコントラストがきれいな夕陽を見ることができました。

毎日ボリューム満点のお食事を重ね、そろそろあっさりしたものも欲しくなる旅後半、選んだメニューは、
スープ・オ・ピストゥ&ニース風サラダのコンビネーション。
「ピストゥ」とは、バジルをオリーブ油、にんにくとすりつぶした南仏名物のペースト。角切りの野菜を煮込んで、ピストゥを加えたスープは「スープ・オ・ピストゥ」と呼ばれ、南仏の代表的な料理のひとつでもあります。

そして、ニースの名物料理といえば!やっぱりニース風サラダ。
日本のカフェでもよく見かけるメニューなので、「ツナ、オリーブ、アンチョビ、ゆで卵やじゃがいもがゴロゴロと入ったボリューム満点のサラダ」というイメージを持っていたのですが、「ニース風サラダは、もともとツナも卵も入っていないシンプルなものだった」とか。「ニースで食べるニース風サラダには、じゃがいもは入っていない」などなど、色々な情報を耳にしたので、実際にどんなものが食べられるのか、楽しみにしていました。

お店に着くと、スタッフの方が料理に使っているハーブの説明をしてくださいました。

こちらのお店では、スープ・オ・ピストゥに、バジル、ローズマリー、タイム、ディル、ローレルを使っているそうです。スープを煮込むときにもいろんなハーブの香りで美味しく仕上げているのですね。
そしてニース風サラダには、セロリ、チャイブ、ベビーリーフ、ねぎで香味を加えているとのこと。

ワクワクしながら料理を待っていると・・・

やってきました!お店の方がひとりずつスープをよそってくれます。

「ここでストップ」と言わないと、いつまでも注ぎ分けられてしまうので、ぼーっとしてたら要注意☆
それではお味見です。

野菜たっぷりのやさしい味わいに、ハーブの香りが自然に溶け込んでいます。
滋味あふれるスープは体にしみわたる美味しさ!色々なハーブが入っているのに、全然青臭くないのです。

お腹もほどよく温まったところで、お次はニース風サラダ。運ばれてきたお皿を見ると・・・

卵、ツナ、トマト、ピーマン、きゅうり、オリーブ、上にはセルフィーユも飾られ、たっぷりの野菜の中には、マルシェで見かけたフェンネルのスライスもあり、シンプルなフレンチドレッシングがかかっています。
・・・が、前評判通り(?!)じゃがいもは入っていませんでした~。

改めて振り返ってみると、ここまでの旅の食事であまり生野菜を食べていません。ホテルの朝食ビュッフェでも、生野菜はプチトマトやきゅうりくらい。久しぶりに味わう新鮮な野菜の香味がとても美味しかったです。
「シンプル・イズ・ベスト」という言葉を実感させる一品でした。

野菜たっぷりの南仏料理でエナジーチャージできました。
次はいよいよ旅の最終訪問地・ジェノバです!!

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