ハーブが香る 南欧の旅

2010年秋、ハーブのふるさと・南欧を訪れました。フランス・プロヴァンス地方に始まり、コルシカ島、コートダジュール、そしてイタリア・ジェノバへの旅路で出会った風景や料理をご紹介します。

2010/10/19

自然と野生のハーブにあふれる島へ ~コルシカ~

旅のメインイベントその2・コルシカ訪問&精油蒸留所見学の一日は、マルセイユから飛行機で日帰りのプランを立てていました。マルセイユのホテルを朝早く出発して空港に到着!

・・・すると、なんと!!フライトがストライキでキャンセルに!!
当初、島の北東にあるバスティアへ到着するはずだったのですが、北西のカルヴィ行きに変更しました。コルシカに行けることになってひとまずホッ。

コルシカは、フランス語読みでコルス。
地中海に浮かぶこの島は、歴史の中でジェノバの支配下に置かれていたこともありました。

「海にそびえる山」とも称えられた美しい島は山や渓谷が多く様々なハーブが自生し、そうしたハーブや、ハーブが自生している灌木地帯は「マキ」と呼ばれています。
コルシカのハーブで特に有名なのが黄色い花を咲かせる「イモーテル」。ちょっとツンと刺激されるような、ほのかにカレーを思わせる香りを放つイモーテルは、夏に花の最盛期を迎えます。キク科の植物で、日本では園芸植物としてよく見かける「カレープラント」の仲間です。

マルセイユから1時間弱ほどで到着しました。
飛行機を降り立った瞬間から、なんとも言えない草木の香りに包まれます。
爽やかでとってもいい香り・・・という感じではなく、一度嗅いだら忘れられないような後に残る力強い香りです。どことなくカレーを思わせる香りが混じっているような印象は、やはり自生するイモーテルから生まれるものなのでしょう。
これがまさしくコルシカのマキの香り!!

ナポレオンの生まれ故郷としても有名なコルシカ。彼が島から遠く離れた船上で風に吹かれながら、
「このにおいをかぐと、島影が見えなくても故郷の近くにいることが分かる」
と語ったと言い伝えられているのも納得です。

もともとバスティアに着く予定だったので、まず海岸沿いに東へ進みます。
車窓から眺めていても、その自然は素晴らしく圧倒されます。地中海の青さはまるで空の青さを映しているかのよう・・・思わずため息。

動画でその眺めをご紹介します!

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コルシカでは、山がちな地形を活かした豚やヤギの畜産が盛ん。生ハムなどの加工品も名産で、歴史的背景や地理的環境から、食文化はイタリア料理に近いと言われています。
途中で寄ったレストランでお昼ご飯♪野菜スープ、生ハムのサラダやポークシチューをいただきました。素朴ながら素材を活かした滋味あふれる美味しさ。特に生ハムは肉の味が濃くて美味しい~。

また、栗も名産のひとつ。
小麦を育てることが難しいことから、自生していた栗を利用してきました。栗粉を使ったケーキのほか、栗を使ったビールもコルシカの味として有名。ぜひ一度味わってみなければ・・・
ということで、こちらのビール「Pietra(ピエチュラ)」をオーダー。
グラスに注いで、ぐびっ、ぐび・・・・・・
独特のコクと甘みがありますが、言われなければ栗が原料になっているなんて思いつかないかも!
ビール好きなら一度は味わっておきたいビールだと思います。

ランチで満腹になった後は、島の東部にある精油蒸留所「ESSENCES NATURELLES CORSES」へ。
門の前で車を降り、小道をてくてくと向かいます。

この日はとってもいいお天気!
陽射しもまぶしくて、10月なのに歩いていると汗ばんでくるほど。

到着すると、蒸留所を管理しているマダムがレモンバーベナのハーブティーを準備して迎えてくださり、精油やこちらの施設についてのお話を聞きながら、ティーをいただきました。

精油とは、植物の花、葉、果皮、種などから抽出した香りのあるオイルで、揮発性(蒸発しやすい性質)と親油性(油に溶けやすい性質)を持つもの。ただ香りを楽しむだけでなく、香水や香料はもちろん、化粧品や入浴剤など生活に幅広く使われています。
こちらで、精油の原料となる様々な芳香植物を植えたガーデンを見せて頂きました。地中海沿岸以外を原産とするハーブやかんきつ類も育てています。

葉から精油がとれるローズマリー、ゼラニウム、コルシカミントやレモンバーベナは、葉をこすると力強い香りを漂わせ、植物自体の生命力の強さを感じました。
そして秋は柑橘類が実りを迎える季節。たわわに実った様子も見ることができました。

ローズマリー、ゼラニウム、コルシカミント、レモンバーベナ、ベルガモット、ライム

風に吹かれるジャスミンに鼻を近づけてみると大人の香りがしました♪

精油の中でも特に高価なのが、お花から採る精油。
花を収穫するのに手間がかかったり、大量に集めた花からごくわずかしか抽出できなかったりと、とても貴重なものなのですね。
代表的なものに、ローズやジャスミン、ビターオレンジの花であるネロリの精油などがありますが、この日はジャスミンがたくさん咲いていました。

続いて蒸留所を見学、こちらの実験用の小型蒸留器でイモーテルの水蒸気蒸留を行っていました。

右側の釜に原料の植物と熱湯を入れて沸かし、植物の芳香成分を蒸発させ、その蒸気が管を通って冷やされ液体となり、左側のガラス容器の中に溜まる仕組みです。

上にうっすら黄色く浮いているのがイモーテルの精油

この液体の水層の上に浮かんでいる部分が精油として得られるのですが、たくさんの原料から得られる精油はごくわずか。
「抽出率の高いユーカリでさえ、1トンの原料から10リットルしか採れないんですよ」
とマダム。
精油の値段がなぜ高いのかよく分かりました。

精油の製造は、通常この屋外にある大型の蒸留器で行っています。こちらは蒸気を原料に当てて精油を抽出する仕組みです。

こうして植物から得られる精油は、まさに自然の恵みの一つだなぁと、改めて実感しました。

精油を抽出する方法には、水蒸気蒸留のほか、柑橘の果皮からとる圧搾法、花の精油をとる溶剤抽出法などがあります。精油の抽出法についてはこちらもご覧ください。

こちらの蒸留所では精油やマッサージオイルも販売しています。
スッキリした香りが欲しかったので、レモンバーベナとペパーミントの精油を買いました。

もっとゆっくり見たかったけれど、帰りのフライト時刻も迫ってきていたので、マダムにお別れを告げ、空港に向かいました。

帰り道でぶどう畑が広がる様子も見えました。コルシカではワインも造られています。

蒸留所から島を横断するように山の中を車で3時間ほど移動し、島の南西・アジャクシオに到着。

日が沈みかかる海の景色は、昼間に見た青い海とはまた違う壮観な眺めでした。
澄みわたる空気、まぶしく島を包む太陽、自然に育まれ、生き抜いてきたハーブ、植物、動物。
そして、山がちな厳しい環境の中、それらとともに暮らしてきた島の人々のたくましさは、日頃忘れがちな自然の素晴らしさや自然が与えてくれる恵みのありがたさを思い起こさせてくれます。

短い滞在でしたが、この旅でコルシカの自然に触れることができました。
「また来たい!」という思いを強く抱きつつ、マルセイユへ戻ったのはすでに21時過ぎ・・・。
車に乗りっぱなしの一日だったので、さすがにちょっと疲れたな~。
ホテルで軽めのディナーをいただきました。(といってもしっかりデザート付き♪)

サーモンのマリネ マスカルポーネチーズのソース、スズキと野菜の重ね焼き、チョコレートムース

サーモンの盛り付けがかわいい~!
クリームみたいに絞り出したマスカルポーネや、チョコレートみたいに添えられたバルサミコソースに、
「サーモンがケーキに?!いきなりデザート?!」
と驚かされます。
こういうセンスがさすがフランス!って思うんですよね。

ホテルの部屋では蒸留所で買ったレモンバーベナの精油をティッシュに垂らして香らせて、ちょっぴりリフレッシュ。心地よい疲労感と香りに包まれながら、「明日はどんな予定だったっけ・・・」と考える間もなく、眠りに落ちていきました・・・。

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