八ヶ岳の薬草店

6月しっとりと雨の日、瑞々しい緑はいっそう濃く感じられ
ひんやりとした空気を吸いこむと鼻から目から皮膚からも 緑色が身体に染み通るようです。
標高1100メートル蓼科にあるハーブとアロマのお店「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」を訪れました。
楚々とした佇まいはいつ訪れても変わらずに在る、香り漂う樹木のような場所です。
時がゆっくり創ったような木陰のお庭には小さなスィートウッドラフが地面の近くで控えめに咲き誇っていました。甘いスィートシスリーの白い花も。
ここは萩尾エリ子さんが40年前に始めたお店、天井からずらりとつり下げられたドライハーブ、そこここに生けられた小さなブーケ、笊の上で気持ち良さそうに乾いているハーブの草。
小さなキッチンからはいいにおいがしてきて、レジの後ろにはたいそう古い大きな時計があります。
「壁に掛けた古い時計は、もう時を刻んでいません。時を告げないからこそ、ここに似合っているように思うのです。」(「香りの扉、草の椅子」萩尾エリ子著)だからでしょうか、香りのせいでしょうか此処で時間を過ごしていると、温かな内側に戻るような、自分の歩いてきた道をふと思い出すのです。
ベランダで四六時中ハーブを育て、それをただ描いていたことそれが絵を描くはじまりだったこと。
そして八ヶ岳の暮らし始めた頃はせっせと一日中土を堀りハーブの庭をつくっていたこと。
いちばん弱っていた時だからこそ人の声ではなく草と香りの力が「胸の奥底に届き」助けてくれたこと。
しみじみとした気持ちになって外に出ると雨上がり、小鳥さんたちの朗らかなさえずりが聴こえてきて
さぁハーブをもっと植えようっとおもうのでした。
八ヶ岳の薬草店には夏でも涼しい風が吹いています。
どうぞ訪れてみてくださいね。
いまいかずよ

四角形