このように長い時代の流れの中で何度もハーブ療法は危機にさらされ、一時は途絶えそうな時もありましたが、今日まで生きながらえてきました。こうした長い歴史の中でハーブを支えてきたのは、日常生活の中で、親から子へとその利用法を伝承してきた民間の人々でした。


 そこには、ハーブが病気に冒された人間の身体をサポートしながら自然治癒力を高め、穏やかに元の健康状態に戻していくというように、自然の摂理に従って働いていることが、人々の心をとらえ続けてきたという歴史があったのです。そして何よりもハーブは、困った時にはいつも人々に寄り添うように草原や庭で繁り、人々の生活の一部だったのではないでしょうか。
 
   近年、ハーブの人気が先進国で急上昇しています。アメリカやカナダではハーブサプリメント、イギリスではOTCハーブ薬(一般医薬品として売られているハーブ薬のこと)、ハーブ療法、そして日本ではアロマテラピーと、世界各国でハーブが注目を集めています。その背景には、現代医学や医師、医療システムの欠陥、ストレス社会、高齢化社会、生活習慣病や慢性疾患の蔓延等の要因が複雑に絡んでいます。

 近年、ハーブの科学的証明が必要とされ盛んに研究されています。確かにそれは重要なことですが、ハーブ中の単一の成分だけに注目してそれを取り出し、その効果を科学的方法で性急に確認して、より速く・強く効果を得るために成分を凝縮するという傾向がみられます。そうしてできた製品を、いくらハーブ由来だ、ナチュラルだといっても、それは長い歴史の中で人間が見出した、ハーブ療法の本来の趣旨とは無縁ではないでしょうか。

 ハーブは大地に生えたままの丸ごとの姿を使うことに意味があります。ハーブを知る人々は口を揃えて言います。「ハーブは化学物質ではなく、自然物なのです」と。丸ごとを使いましょう。昔から家庭に伝わる迷信のようなハーブの使い方の中にも、大きな意味が隠されていることが少なくありません。イギリスでは、このような情報をとても大切な研究対象とし、現代ハーブ療法の実践に取り入れています。
 昔の主婦のハーブ利用法を本で読んでみたりすると、楽しさとハーブへの愛情と家族への愛、当時の生活の様子が伝わってきます。私達もそれにならって、ハーブを自分の周りで育てながら毎日の生活に取り入れましょう。ハーブにもっと触れて、香りを楽しみ、食し、使いこなしましょう。「ハーブを本当に知る」ということは、身近にハーブのあるライフスタイルから始まると思うのです。


昨年の「とっておきのハーブ生活」早春号で皆さんにお聞きした、「料理に一番使いたいハーブは何ですか?」の結果です。
やはりバジルがだんとつ。全体の3分の1強を占めました。ローズマリーが10%強、ミントが7%強とつづきます。4位はハーブではありませんが、シナモンが5%強。以外にがんばっているのが、オレガノとかカモミール。実際の売り上げ順位ではルッコラ(ロケット)やパセリ(イタリアンパセリ)などがもっと上位を占めるのですが、「使ってみたいハーブ」となると、少し数字が違ってくるところが面白いところです。



           

文:桜井 春香(エスビー食品).撮影:榊田 千佳子.イラスト・図表:立原雅子