当時、今でいう薬剤師、カウンセラー、そして助産婦として民間から頼りにされていた彼女たちが持つハーブの知識は口承で伝えられ、それは聖職者たちが本から学べる知識ではありませんでした。庶民に信頼される力を持つ者、そして人間の生と死に関わる者は神に仕える聖職者でなければならない、と信じて医療を行う男性権力者にとって、彼女たちは邪魔な存在であったようです。


 しかも、彼女たちが秘密の用語でハーブについて会話したこと、彼女たちの多くが異教徒であること、男女の性差別、貧富の差、未亡人で守ってくれる人が周りにいないこと等の要因が重なり合う中、多くのワイズウーマンたちも「魔女」に仕立て上げられ火あぶりにされてしまいました。魔女狩りの背景は様々な要因が複雑に絡み合っていますが、このような悲劇が、数世紀に渡りヨーロッパ各地で起こりました。

 Barbara Ehrenreich や Deirdre English による「魔女、助産婦、そして看護婦:女性ヒーラーの歴史」という書物の中で、「魔女狩りは低階級の女性ヒーラーを永遠に排除するものではなかったが、彼女たちに迷信深く、悪人の疑いがある人という烙印が永遠に押されたのです。」と書かれています。
ワイズウーマンたちは集落から少し離れた小屋に一人で暮らす未亡人の老婆が多かったそうですが、やはりおとぎ話に出てくる魔女のすみかは山奥の不気味な場所であり、魔女のイメージが「悪者」であるのは、この魔女狩りによるものでしょうか。


 しかし、「魔女」と呼ばれた女性たちのハーブ療法、それは家族を愛し、守るためのものでした。彼女たちの家に行くと、悩みや世間話を聞いてもらう。庭で取れたカモマイルのハーブティーが出され、リラックス作用で気持ちがだんだん落ち着いてくる・・・。そんな日常的なハーブの使い方が主だったのです。
 現在、ヨーロッパでは様々な教育機関でハーブ療法を学べるコースが提供されていますが、現代ハーブ療法でも、カウセリングを重視し患者の話しを良く聞くというスタイルが重視されています。それは昔のお茶の間で発展してきた民間療法の流れを受け継いでいるからなのです。そして不思議なことに、いや当然と言うべきでしょうか、ハーブ療法を学ぶ生徒の多くは、今も女性や主婦が多いのです。
   


昨年12月号の「とっておきのハーブ生活」で皆さんにお聞きした、「一番飲みたいハーブティーは何ですか?」の結果です。
カモミールが他を圧倒。全体の3割強を占めました。そして注目は、第2位。今も話題のローズヒップが全体の15%弱を獲得、ミント類やレモングラスといった常連をしのぐ人気ぶりです。やはりビタミンCをはじめ、その他ビタミンEや鉄分、カルシウム等も豊富に含んでいて、美肌にいいという情報がすっかり行き渡ったのが要因でしょう。



           

文:桜井 春香(エスビー食品).撮影:榊田 千佳子.イラスト・図表:立原雅子