以前に手がけたお香(室内用の線香)の商品開発では、今までにないナチュラルなハーブの香りのインセンスを作りたいと、やる気満々で始めたのですが・・・。
 インセンスの材料とレモンやミントなどのハーブの精油類を練り合わせて形作って乾燥させ、いざ火をつけると、もとのハーブとはかけ離れた、ただ煙たい香りになってしまって、がっかり。
 その後、香料会社の方のアドバイスを受け、インセンスのナチュラルな香りは、必ずしも天然香料からだけ作れるのではないということを実感しました。
 改良を加えながら商品化されたインセンスは、できる限り天然香料を使いながら、火をつけた香りもナチュラルなものに仕上がり、ほっとした次第です。

 ちなみに「とっておきのハーブ生活」6月号のグッズ紹介で取りあげたインセンスショップ「リスン」さんでは、140種もの香りのインセンスを用意されています。
 また、画家や、照明作家、写真家、陶芸家などのアーティスト達とのコラボレーションで、アートから喚起されるイメージをふくらませて創作した香りのインセンスなど、香りがまさしく芸術であるということを感じさせる品揃えです。

 想像するのと、実際にやってみるのとは大違いということは良くありますが、このハーブ染めの着物に関しても当てはまりました。
 着物のメーカーが、ハーブ染めの着物の商品開発を一緒にしましょうということで始めた企画でしたが、簡単にできそう、と想像していたのとは大違い。大体自宅ではストール以上大きいものを染めたことがなかったものですから、着物一反分をハーブの染料で染めるということがどれほど大変かわかっていませんでした。
 そもそも、一反の着物を浸染といって、染液に浸して染めるのは、むらになりやすくて大変難しいので、染液を刷毛で絹地に塗る引き染めという手法を使うことになります。それから、紫外線や摩擦で色の耐久性は大丈夫かどうかという、厳しい製品テストもクリアしなければなりません。何しろ着物は高価な商品ですから、必然的に製品の高水準が求められるのです。
 いわゆる草木染めといわれるもののなかで、100%植物染料だけというのはまれだそうです。特に、いったん布地に織ったものを植物染料で、堅牢度を保ちながらむらなく染めるのは至難の業なのです。絹糸を染めたものを布に織る、いわゆる紬という手法ならば美しい布ができあがるのですが、その場合、コストが大変高くなってしまい、気軽に買えるものとはほど遠くなってしまいます。
 私がハーブ染めの着物を着る日はやってくるのでしょうか。


 大量消費の時代が過ぎ去った今、ハーブという名前のイメージだけで商品が作られるという機会は減っていくと思われます。むしろ、ハーブ本来の多様性が個人の興味に添って生かされるようになるのではないでしょうか。昔ながらの手作りが見直されていることもあり、手作りの中にちょっとハーブを使ってみようか、というようなごく個人的なアプローチで。

 私自身、着物地一反分は無理だけど、帯揚げぐらいだったら自分で染められるから、染めてみたいな、と思っているところです。
 12月号の「楽しむハーブ」で紹介したレモングラスの2wayリースも、ちょっと和風を取り入れています。こんなマイナーな感じで和風にハーブを合わせてみるのも、ふさわしい感じがしています。
文:榊田千佳子.撮影:榊田千佳子他
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