ハーブというと外国のものという印象が強いけれど、実は日本もハーブ王国。四季のある雨の豊富な気候のおかげで、たくさんのハーブが自生し、栽培もさかんです。





本のハーブというとすぐに思いつくのは、シソ、ミョウガ、アサツキ、ミツバ、サンショウ、フキなど、日本の食卓には欠かせない薬味。日本原産のものも外国から来たものもありますが、一般的な日本の野山に自生しているもので、人々の暮らしに何らかの形で役立っているものは、日本のハーブと呼んで差し支えないでしょう。中でも薬効のあるものを、人々は昔から薬草として、民間療法の中で使ってきました。ドクダミ茶やカキの葉茶、ビワ茶などの健康茶は、立派なハーブティーです。

 「ハーブは匂いがきついからなじまない」と言っている人の多くは、上に挙げたような日本のハーブは、刺身に添えたり、鍋物の薬味にしたりと、好んで食べているのではないでしょうか。それが、日本に生まれ育ったものには当然のことです。
 同じように、ローズマリー、タイム、セージなどヨーロッパのハーブはヨーロッパの人々が、レモングラス、ガランガーなど東南アジアのハーブはその地域の人々が、慣れ親しんできたハーブなのです。
 つまり、「ハーブ」なんていうと特別のもののように聞こえますが、要は全世界の有用植物の総合名称なだけですから、先入観をなくして、植物、特に人々の暮らしと結びついた植物のすばらしさに、衣・食・住・を通じて触れてもらいたいと願っています。





ころで、外国のハーブ関連の本やカタログを見ていると、アジアのハーブは、欧米の人にとって、あこがれのハーブのようです。私達がラベンダーやセージなどに素敵なイメージを持っているのと似て、欧米の人々にとって日本のシソ、サンショウなどにエキゾチックなイメージを持っているのが見受けられます。

 ちょっと不思議なのは、何冊もの本で、「Mizuna」がハーブとして取りあげられていることです。添えられている写真もまさしく京野菜の水菜。大体水菜はハーブなのでしょうか。まあ、野菜はもともと野生の食べられるハーブだったものを、可食部を多くしたり、栽培に適するように改良されたものですから、どっちでもいいようなものですが、野生の水菜というのは聞いたことがありません。
 一方、中国原産ですが、夏から秋の食卓の定番のミョウガはほとんど見あたりません。きっと、誰かがはじめに水菜をハーブとして載せたのを、他の人がコピーしてきたからではないでしょうか。そして、ミョウガは紹介する人がいないから知られていない・・・。アメリカやイギリスで、日本のハーブの本を出版したら、意外に隠れたロングセラーになるのでは・・・という気がしてきます。


自身、外国のハーブを知るにつけ、日本のハーブ=香草、薬草、野草と呼ばれるものについていかに知識が乏しいか、だんだん気になってきました。
 もともと田舎育ちの私は子供の頃、家族や祖父母と四季折々の野山の恵みを味わっていた、すばらしい思い出があります。春にはタケノコ、フキ、ノビル、セリ、ウド、秋にはクリ、アケビ、ムカゴなど、採りに行くときは家族と一緒のうれしさも手伝って、わくわくして本当に楽しかったものです。そんな経験が基にあって、西洋のハーブにも興味を持ったのですが、いつの間にか、ルーツの日本のハーブを置き去りにしているのに気づきました。

 ちょうどその頃、野山の食べられる草木を摘んで料理していただく、「摘み菜料理」を伝える活動をしている方との出会いがあり、昔から伝えられてきた野山の幸を食卓に生かすことの楽しさを再認識しました。
 次回のハーブエピソードは、日本のハーブpart2。食べられる山野草と薬草について、もう少しくわしくお話ししたいと思います。


  文:榊田千佳子.イラスト:いまいかずよ
Copyright 1997-2002 S&B FOODS INC. All rights reserved.