ここで興味深いのは、ネギ属香辛野菜から生成する機能性含硫化合物が、実はその調理方法により七変化する点です。

 ニンニクを例に説明しますと、ニンニク中にはアリインという無臭の含硫アミノ酸が多く蓄えられており、調理の過程でニンニクを切ったり潰したりした時に内在する酵素アリイナーゼの作用により、このアリインが分解されます。

 不安定な含硫化合物(スルフェン酸)を経てアリシンを生成するが、アリシン自身はスープなどの水溶液中では不安定であり、油分に溶け込んだ状態で比較的安定に存在できます。
(注:ニンニクがスタミナに効くというのは、このアリシンが水溶性ビタミンB1と結合して、ビタミンB1の吸収量を大幅にアップさせるというのは有名な話です。)
 このままニンニクを生で利用した場合(例えばラーメン屋のおろしニンニクやサラダのドレッシングなど)、アリシンは強力な血栓抑制効果を示すアホエンへと徐々に変化していく(時間が必要)。それ故、ニンニクを研究している日大の有賀先生らは、ニンニクを切ってから30分ほど置くことを勧めています。
 これに対して、ニンニクは加熱して調理されることの方が多いように思われます。加熱の度合いにもよりますが、アホエンやアリシンの大部分は加熱により分解してしまいます。その代わりに、ジアリルジスルフィド(ニンニクのにおいそのもの!)が生の時と比べて圧倒的に多く生成し、MATS(マッツ)やジチインという新たな機能性含硫化合物が加熱により生成してきます(以上、図を参照)。

 これは、タマネギでも同様の物質変化が進行しています。すなわち、ネギ属香辛野菜は煮ても良し、焼いても良し、生でも生なりの美味しさと生理機能が期待できるスパイスであるといえます。ニンニクやタマネギの持つ様々な生理機能が、この含硫化合物の多様性からも伺い知ることができます。
 ただ、タマネギで涙を流さないために冷やしてから切ったり、すぐに水にさらしてしまうこと、そしてニンニクを軽く電子レンジで加熱してから切ってしまったのでは、期待される生理機能は半減以下となってしまうでしょう。ニンニクはプンプン臭わせて、タマネギはどんどん泣きながら調理する方が健康には効果的なのです。ただし、生のニンニクや生のタマネギの食べ過ぎは、下痢をする場合があるので注意しましょう。
  文:榊田千佳子.イラスト:いまいかずよ
Copyright 1997-2002 S&B FOODS INC. All rights reserved.