こだわりの職人を尋ねて
2 パン職人 佐々木卓也

職人へのきっかけは1本のテレビ番組 ~「職人」というキーワードと母の手作りパンとの記憶がマッチ~

パン職人になったきっかけはなんですか?
大学時代に「極める」という毎週職人さんを紹介するTV番組を見たことがきっかけでした。幼いころから手先が器用で絵を描くことが好きだったのもあってか、その番組を見たときにピンときて、「職人っていいな」と思うようになりました。
また、幼い頃、母親がよく手作りでパンを焼いてくれていたんです。その匂いや昔の記憶と「職人」というキーワードがマッチして、パン職人になろうと思いました。
入社されてからはどのようなお仕事をされていたのですか?
まず、研修で成形・仕込み・窯、と基本的な作り方を教わりました。僕は専門学校を出ていないので、わからないことだらけ。周りと目に見えて差があったのが悔しかったですね。
先輩たちに早く追いついて1人前になるために、パンに関する技術書や雑誌など、たくさんの本を読んで勉強しました。家には専門書だけでも30冊以上あります。最初のうちはまったく何が書かれているのかわからないんです。でも、1年後、2年後に読み直すと「あ、こういうことを言っていたんだ」と理解できる部分が増えて、自分の成長を感じることができました。
佐々木さんは、クープ・デュ・モンド(ベーカリー・ワールドカップ)で優勝されていますが、優勝できた理由はなんだと思いますか?
大会当日、練習通りにミスなくできたことだと思います。いつもと違う冷蔵庫や窯、初めて使う器具機材という環境の中で、いかに完璧に近い状態に持っていくかというところが重要でした。もうひとつは、チームワークです。もともと大会ではチームワークも審査基準のひとつだったので、大会の2ヵ月前から日本代表3人のコンビネーションを高めていきました。「時間内に終える」「失敗しない」という当日の目標をクリアできたのが勝因だと思います。実際、僕たち日本チームは20分の余裕を持って作業を終えることができました。

大切なのは、突き詰めていくこと ~生地を見る目を養うことが一番大切だと考えています~

現在のお仕事はどういったことをされているのですか?
製品開発部門で、新しいパンを考えたり、現在のパンの品質改善を行ったりしています。
例えば、現場のパンのクオリティが定めている基準より少しでも低いと、その原因がなんなのかを突き詰めていきます。その日の気候、気温によってパンは表情を変えますから、要因は様々です。つまり僕たちは、現場の人たちよりも高い技術と知識を持っていなければならない。そのレベルに至るため日々勉強し、成長し続けることが大切だと感じています。
職人として大切にしているこだわりは?
「仕込み」です。生地の出来の8割は仕込みで決まります。配合や水温、気温、粉温などは規定がありますが、最後の判断は自分。自分の目と耳と皮膚で感じとります。経験によって、この感覚を磨くことがとても重要です。
生地はこね方によって味も食感も変化するので、生地を見る目を養うことを一番大切にしています。
パン職人というお仕事の魅力は?
店舗では、数多くのパンを時間内にきれいに作り、お客さんが笑顔で目の前のパンを買ってくださる様子を見られるという喜びがありました。
今の開発の仕事には、クリエイティブな楽しさがあります。もともと手先が器用で、絵を描くことも好きだったので、新しいパンを考えることはとても楽しいです。改めて、自分に向いていると思います。
佐々木さんにとってパン職人とは?
僕の人生そのものです。これからもパンを作ることだけに没頭し、一生をパンに捧げると思います。だから、これからも楽しく、パン職人としての技を磨き、高みを目指していきたいです。

野菜たっぷりの惣菜カレーパンなんてどうですか? ~野菜が溶けたような自然なとろみが印象的です~

カレーはお好きですか?
月に1度行く研修センターの食堂のメニューがカレーなので、カレーには馴染みがあります。月に数回は絶対食べていますね。
ゴールデンカレーのお味はいかがですか?
スパイスの香りがいいですね。喉ごしのあとに鼻の方に香りが届きます。また、とろみが小麦粉っぽくなくていいと思います。野菜が溶けたような、自然なとろみを感じます。パンと一緒に食べるなら、サクッとして柔らかいパンが合うと思いますよ。
もしゴールデンカレーでパンを開発するならどんなパンを作りますか?
野菜をいっぱい入れた惣菜カレーパンがよさそうですね。色とりどりの野菜がのっている色鮮やかなパンはどうでしょうか。

Profile

佐々木卓也Sasaki Takuya

1970年、横浜生まれ。大学卒業後、パンの製造・販売会社ポンパドウルに就職し、そこでパンの製造を学び、フランス研修にも参加。2012年、クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジェリー世界大会で優勝。現在、ポンパドウルの製品開発課に所属。2014年3月マスター・ドゥ・ラ・ブーランジュリー ヴィエノワズリー部門出場予定
http://www.pompadour.co.jp