研究開発:新しい価値の創造を通じて、豊かな食文化のお役に立ちたいというマインドに溢れた研究活動の一端を紹介します

シリーズ 香りを科学する その5 香菜(シャンツァイ、パクチー) 名は体を表す ~香気成分の分布~

今回は、「香菜」という、いかにもハーブらしい名前をもつハーブのお話です。
以前は、香菜を野菜売り場で見かけることもあまり多くなく、「香菜はちょっと・・・」と、敬遠される方も多くいました。
しかし最近では、香味付の野菜としてだけではなく、サラダとして食べたりするようになり、野菜売り場でもよく見かける香味野菜の一つになっています。
ところで、香菜の独特な香りには、(E)-2-ドデセナール(以下ドデセナール)などの、アルデヒドと総称される成分が深く関係しています。
特に、ドデセナールの香りは、香菜の特徴的な風味に影響を及ぼす物質です。

香菜を実際に手に取ってみると、部位によって香りの強さが違うように感じる人もいるかもしれません。
それでは、実際に『葉』・『茎』・『根』でドデセナールの含有量を比較してみましょう。

ドデセナールは、葉に少なく、根に多く存在していることがわかります。
そこで、葉をさらに調べてみると、面白いことがわかってきています。
ドデセナールは葉脈に多く存在し、それ以外の部分ではほとんど検出されませんでした。
葉脈の部分(赤い点線)を切り取ってにおいを嗅ぐと、強烈に香菜の香りがしますが、それ以外の葉の部分(白く囲まれた部分)ではほとんど香りを感じません。
この香りが強い部分と弱い部分が葉全体に混在していることが、サラダとして美味しく香菜の葉を食べられる理由の一つかもしれません。

それでは、最もドデセナールの多かった根はどうなのでしょうか?
根でも面白い現象が見られます。香菜の香りが表面に凝縮しているのです。
根はサラダのドレッシングに風味づけでも使用されますが、この凝縮した香りがアクセントとなり好まれているのかもしれません。

茎におけるドデセナールの分布はよくわかっていませんが、葉や根の香気成分の分布からもわかるように 香菜の独特の香りは、このように不思議な面を持っているのです。

香菜には、自然が作り出した香りのアクセントが存在し、それが食べる時の美味しさを演出しているのかもしれません。