栽培の現場トウガラシ種採り物語

種採り物語第三弾は、『トウガラシ』の採種についてご紹介致します。
トウガラシは、当社の主力商品ではカレー、一味唐からし、七味唐からし、ラー油などに使用されている重要なスパイスです。数千種類もの品種があると言われており、世界各地で幅広く利用されています。

忍野試験農場ではトウガラシの新品種育成に取り組み、その研究成果の応用を図っています。
お客様に喜んで頂けるおいしい商品の原料を目指し、新しい特徴を持つ品種を育成すること、完成した品種を増やし、継続的に種を採ることは重要な作業になります。

トウガラシ種採り物語

トウガラシは果実の中に種がたくさん入っていて、比較的多くの種を得ることができます。ただ、近くに別のトウガラシがあると交配して異なる品種同士が混ざってしまうので、しっかり隔離された環境で栽培する必要があるなど、管理に気を遣います。

忍野試験農場では2月に種をまき、苗を育てて5月にハウスへ定植、10月頃から果実の収穫が始まります。

一般的なトウガラシであれば、収穫した果実を1ヶ月ほどかけ自然乾燥させ、乾燥した果実を手でちぎると簡単に種を取り出すことができます。鷹の爪を料理に使うときに経験された方も多いのではないでしょうか?

ところが、激辛のトウガラシとなると簡単にはいきません・・・。
自社育成品種SBカプマックス(※)の例を紹介します。

SBカプマックスとは
エスビー食品が育成したトウガラシの品種で、2004年に農林水産省に品種登録、2006年12月にギネスで世界一辛いスパイス(当時)として認定されました。

トウガラシの種子は胎座と呼ばれる部分(ワタのような部分)に付いており、この部分に、含まれる辛味成分のほとんどが蓄積されています。

  • 胎座

辛味の主成分であるカプサイシンは、味の辛さだけでなく、「痛い」という感覚も起こす物質です。
先程と同じように乾燥してから種を取り出そうとすると、乾燥した胎座が飛び散り、非常に危険な作業となります。
(乾燥することで辛味成分がさらに濃縮されています!)

生の果実を割ってピンセットで地道に種を取り出す作業は比較的安全に行えますが、これでは作業効率が悪すぎます。

そこで、忍野試験農場では効率良くできるよう、ある方法を採用していますが、それは一般家庭にある意外な物がヒントになっています。

それは・・・掃除機です。

掃除をしている時にアイデアが浮かび、生のトウガラシからチューブで種を吸い出せるように吸引機を考案しました。この方法だと、辛味成分の刺激も少なく作業者の安全を考慮しながら効率の良い作業が行えます。
取り出した種は自然乾燥をした後、産地への旅立ちまで保管しています。